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4番、サード、いたち野郎

千葉ロックマリーンズ
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デヴィッド・ボウイ死去

総括しきれないほどのキャリアを積んだ人は、死ぬ間際にどんなことを考えるだろう。

デヴィッド・ボウイの50年近くに渡るアーティスト生活は、変化の連続。アンダーグラウンドなフォークシーンからヒットを飛ばして間を空けずに派手な化粧を施し、数年後にはベルリンから革新的なインストゥルメンタル音楽を届け、ちょっと休んだと思ったら今度はディスコサウンドで音楽界の頂点に。カメレオンと揶揄されるほどほかのミュージシャンには真似できないスタイルチェンジを見せ、その度に賞賛の絶叫と批判の怒号を受け止めてきた。創作意欲を常に高く保ち、各年代ごとに名作と言われるアルバムを生み出し続けた。ロックのアイコンとして生きてきた唯一無二の人生は、最期の目にどう映ったのか。

訃報のあとボウイのごく初期のアルバム「Space Oddity」を聴いた。歌声がいままで聴いてきたものと別ものに思える。ジョージ・ハリスンの時もそうだった。アンディ・ウォーホルは「死んだ人の歌は怖く感じる」と書いていたけども、ぼくも子どもの時からずっとそう考えていた。この声がこの世にもう存在しないと思うと、いつもより耳の奥底まで響く錯覚に陥る。

ちょうどレコードを整理している最中で、並べてみるとボウイは3、4番目くらいにレコードを持っていた。ヘヴィなリスナーとはいえないが、古いロックが好きな人ならば、ボウイのアルバムを1枚くらい持ってるんじゃないだろうか。それくらい普遍的な存在だと思う。

ぼくは映画「ラビリンス」での俳優・ボウイも好きだ。80年代の洋画を見ていると、若者の部屋にボウイのポスターが貼ってある場面をよく目にする。「レッツ・ダンス」が売れに売れていた時期なのだろうが、年をとっても影響力を持ち続ける彼のカリスマ性に感心していた。

新作「Blackstar」を発表した2日後に亡くなるなんて、誰も予想できない結末だった。彼の発表するアルバムがいつもそうであったように。彼の家族と友人たちにお悔やみを。



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2015年に聴いたレコード10枚

年が明けてしまいました!明けましておめでとうございます。
いきなり昨年の話になりますが、例年に比べ多くレコードを買った2015年。その一方でライヴに足を運んだのはポール・マッカートニーとキング・クリムゾンの2つだけで、まあオーディオを一新したことだしそれでいいのさ、とひとり嘯いているところです。
昨年の日本の年間シングルチャートをこないだテレビで見てたんですが、トップ100のほとんどをEXILE、ジャニーズ、AKB、韓流の4派が占めていました。趣味が多様化したと言われる昨今、なぜ一部に人気が集中しているのか不思議なんですが、じゃあラジオはどうかというと同じ曲ばっかりかかっててね。そんなナウな環境に飽きたら昔のレコードを探してみましょう!いまよりも新鮮な発見がいくつもあるはず。

1.Paul McCartney「New」(2013・英)

ポール・マッカートニーの来日公演はこちらの最新作ツアーだったわけですが、本作は近年の中でも好みの作品だなーと思ってまして、来日公演後にあの光景を再び思い出したいという気持ちもあってレコードを探し出し、何度も聴きました。プロデューサーが曲ごとにバラバラだそうなんですが、まとまりのある中にもバラエティに富んでいて、ライヴではもっと新作から演奏してもいいんじゃないか、と思うほどどれも印象に残る曲ばかり。


2.Albert Marcoeur(1979・仏)

今年は初めて新潟県に上陸した記念すべき一年となりまして、とはいえはじめは目的もなく来てしまったので、じゃあってんでまず向かうところはレコード屋なわけですが、その中の1件で買ったのがこちら。「フランスのフランク・ザッパ」と呼ばれているらしいアルバート・マルクールの3枚目のアルバム。まあザッパのようだといえばそうっぽいのですが。見た目も含めて。いわゆる即興演奏ではなく、調子外れのメロディ、厚みがありつつどこかズレている管楽器など、随所に脱ロック志向が伺えまして、その辺がアバンギャルドに類別される所以でしょうか。これより前の2枚は同じデザイナー?ジャケットが秀逸ですのでセカンドのジャケ写をこちらに。



3.Television「The Brow Up」(1982・米)

来月再び来日するんですよね、といってもぼくが観たことあるのはトム・ヴァーレインのソロだけで、テレビジョンの公演を見るのは初めてになります。その準備ってつもりでもなかったんですが、ようやくこのライヴ盤を聴いている次第。音はあんまりですが、それを補うライヴならではのスピード、声、演奏の揺らぎというのものが終始持続する様はテレビジョンらしく、一方でスタジオ盤のライヴ的な意志をも感じ取れる、いい作品だと思います。


4.T・Rex「Electric Warrior」(1971・英)

中学生の頃にピクチャーディスクのCDを買い、その後国内盤レコード、米盤再発、と経てついにUKオリジナル盤。ポスター無しのせい?か妙に安価でラッキー。それまであんまし真面目に聴いてないアルバムでしたが、あまりの音の良さに何度もかけちゃいましたね。このパターンはボウイの「ジギー・スターダスト」でもそうでした。どちらもトニー・ヴィスコンティのプロデュース作品ですが、彼の音はオリジナル盤でこそ真価を発揮するのか?これまで聴いてきたものとは別物、という表現がピッタシでした。こういう瞬間に出会うのもレコードを買う楽しみの一つ。


5.Ton steine Scherben「Warum geht es mir so dreckig?」(1971・独)
  
10年近く前に録音させてもらったCDRを聴くたびになんつー過激な、と思っていました。ドイツのインディーズレーベルから発売された作品で、バンド名の意味は「粘土、石、破片」。本作に収録された挑戦的なシングル「Macht kapurt, was ench kapurt macht」(お前たちを壊すものを破壊しろ)がヒットしています。フォークというにはヘヴィで、ガレージというには後ノリで、パンクというにはやけっぱちすぎる。類型の壁を打破するごときラルフ・メービウス(リオ・ライザー)の暴発ボイスは、ドイツ語のためか他の国では出ておらず、いわゆるクラウト・ロックの範疇にもなく。果たして日本には何枚存在しているのか。レコード再発もありますが、こちらはオリジナル。ポスターに写ったメンバーの目つきもイカしてます。ジャケットはボール紙のような質のもので、両サイドをホッチキスで留めただけという過激なもの。アルバム・タイトルの意味は「俺たちはなぜこうも冴えないのか?」


6.Ned Doheny「Ned Doheny」(1973・米)

ネッド・ドヒニーてなんでか知らんが水着でニヤニヤしてるジャケの人か、ていうある種マイナスな印象でしたが、あのアルバムも日本での人気の通りいい内容ですし、そしてそれより遡ること3年前のファーストもCDで聴いて、こりゃいいなと思ってました。今回は国内盤(東芝EMI)ですが見つけまして、録音がいいのか(レーベルはあのアサイラム)、国内盤でも結構いいな、って感じです。優しいメロディに少し力の入った歌声を添え、バックの演奏がまたしっくりときまして、名盤だなーと思います。


7.Nirvana「The Story of Simon Simopath」(1967・英)
 
初期の名曲「Pentecost Hotel」はシングルで持っていて大好き。アルバムもCDでは持っていたんですが、あんましピンとこなくて放置してました。アナログも高いので入手するとは思っていなかったのですが、ほとんど行くことのない地にて米盤ですが買える値段で発見。ステレオですけど1日置いて買いました。こうしてアナログで改めて聴くといいんですね。サージェント・ペパーズにいち早く反応した作品といいますか、兎にも角にもアルバム冒頭のイントロが最高。SF的な音の中にも、田舎然としたバンジョーでサクッと終わるB面ラストの有り様もイギリスらしくてこれも憎い。ジャケも素敵だし。しかし収録時間短すぎです。


8.サウンドトラック「The Shining」(1980・米)
 
スタンリー・キューブリック映画「シャイニング」の曲といえば、やっぱピンチの時のアレですよね。レコードではB面の冒頭からスタートしますが、嵐の前の静けさを湛えたA面から一転、アラームなサウンドに身構えてしまいます。そして帯見るとバリー・リンドンも出てるのね。全然売れてなさそう。


9.Todd Rundgren「Something Anything?」(1972・米)
  
今年はオーディオを一新。その際に音がいいレコードといえば、ってことでこちらを何度もかけて元々音の鮮度のよいこのアルバムを、さらに引き出す環境に満足していました。あまりにハマってしまい、2枚組を1枚にした国内盤も入手。帯付きならなかなかの値段がする一品で、日本オリジナルジャケットも手伝って海外で人気があるとか。


10.The Rolling Stones「Their Satanic Majesties Request」(1967・英)
 
ストーンズを普段ほとんど聴かない上、このアルバムは15年くらい前に国内盤を1回聴いて売った苦い経験あり、ですがニルヴァーナと一緒にやはり米盤ですが美盤モノラルを物は試し、で入手しました。すると、音が別物といいますか、何とだよ、と言われるとよくわからないんですが、このモノラル、アメリカ盤でしか出なさ気な遠くからこだまする感じ、根っからのサイケサウンド、と思わせました。この音そのものは唯一無二だなと。しかし曲の印象は変わらず……A面のビル・ワイマンの次の曲がいいなと思います。


その他、紹介しきれなかったけどよく聴いたアルバムのジャケだけ載せていきます。本年もよろしくお願いします。

                   



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2015年に読んだ本10冊

今年は短い空き時間が多く、それじゃあ映画は見られない、ってことで本をよく読みました。
不思議なもので、今年から読み始めた水木しげる、野坂昭如の両氏が亡くなるという憂き目にあいました。


1.ぼく、ドラえもんでした。

とどのつまり大山のぶ代さんの自伝でして、特にドラえもん作品での録音現場、イベント、旅行などの話を中心に語っているのですが、読んだあとに大山さんが認知症だという発表があり、この本に書いたことも忘れていくのかと思うと、世の中は因果なものだと感じずにおれず。




2.ニール・ヤング自伝Ⅰ

自伝、といってますが生まれてからのことを順番に記していく、という調子はまったくなく、本人の思いついた順に掲載しているんだそうです。ミュージシャン友だちの死、重病の子どもとの日々、音楽ファイルの高音質化プロジェクト、趣味の鉄道模型コレクション……純粋な気持ちで綴られた言葉は本人にしか書き得ない、これこそ自伝、と呼ぶに相応しい一冊。


3.夜と霧

お子さんの教育にもぜひ!とは軽々しく言えませんが、本書の価値というのは単にあのナチスによる収容所での惨劇を経験し、反戦を訴える、というところにはありません。著者は心理学者であり、常に環境の変化と自身、周囲の人間の変化に目を配り、極限状態にいることとは、当事者にとってどういうことなのか。記録的に描くその冷静さにまた身を震わしてしまう、その迫真さに高い価値があるんじゃないかしら、と思っています。映画も有名ですが、原作のこちらもまた名著でして。


4.スタジオの音が聴こえる

レコードジャケットの裏を見ると録音/ミキシングのスタジオの名前が記されていて、あれ、このスタジオの名前を前も見たな、って思いません?そんな経験があって、一時期買ったレコードのスタジオ名をエクセルで記録してました。すぐ面倒くさくなってやめましたが。それで検索かけると、あれとあれが同じスタジオなんだな、とわかったりしてちょっと面白い。
というわけで、本書はロックやソウルの有名なスタジオの開設経緯、コンソールなどを紹介したもので、こういう本ってありそうでなかったというものですし、自分のレコードに対して足りない認識をしっかり埋めてくれた、そんな本です。


5.自動車の社会的費用

自動車ってのはあれだけ人の命にかかわる事故を起こしながら、なぜ大手を振って走っているのか、歩いてる人に対してあんなクラクション鳴らしてさあ、と幼少の頃より思っていましたが、世界的に著名な経済学者が同じことをテーマにしていて、ぼくの思い違いでなくてホッとした次第。自動車を走らせることで経済が豊かになったように見えるが、それにより失われるもの……人命、ケガ、環境、道路の維持費など、それらを解決するための損失を差っ引くと、果たして本当に我々はその恩恵を受けたことになるか、という著書。大量の自動車が闊歩しだした70年頃のもの。


6.われ生きたり

昭和史に名を残す「金嬉老事件」。その内容については「在日朝鮮人に対する差別が絡んで……あとははてさて」という程度しか知らなかったんですが、金嬉老本人による手記のこちらを読みその過程を知ることとなりました。
戦中~戦後の在日外国人に対する差別に思いを寄せることもまた然りですが、何といっても在日朝鮮人で形成された集落……その一部はヤクザと化し、また別のヤクザと相対する。一触即発の仁義なき世界は昭和ヤクザ映画そのもので、その迫力たるや。あらゆる側面から人間について学ぶことの多い一冊かと思います。早川義夫さんもご推薦。


7.「山月記」はなぜ国民教材となったか

あなたも読んだはず、山月記。なぜならば戦後すぐに「良書」としてその地位を確固たるものにした山月記は、今まで教科書に掲載され続けているからです。
山月記が定着していく経緯は意外と短い間になされるのですが、現代小説に対する扱いがいかに変化し、いまでは当たり前になった作者の気持ちの分析……いわゆる「読解」へ至ったのか、という点に腐心した論文となってまして、これまた現役教師によるものですから、現場の労苦というものを思いながら読むのもまたよろし。本当は作者の気まぐれで、そこまで考えて書いてないんじゃね?という誰しもが思う意見も掲載していて、ではその上で、という展開は清々しいなと思います。


8.ハイ・フィデリティ

大ヒットした映画はすでに見ていますが、原作のノリもなかなかイカしてます。最近の海外小説特有のシニカルなのに軽快な感じ、がモロに出てまして、音楽ネタばかりの脚注も楽しい人には楽しいけども、苦痛でしかない人も相当にいるだろう。それこそがあなたにとってのレコードマニアなのです。スティーヴィー・ワンダーのレコードを求められているのに売ろうとせず客を突き返す、あの店員のような。


9.川釣り

興味ないことなのに読んでいると面白いなあ、でも自分ではやらないなあ、っていう本がこれまでにいくつかありました。水上勉の畑作業、蛭子能収の競艇指南、いましろたかしの渓流釣りマンガ、そして井伏鱒二の川釣りをテーマにしたエッセイもまた同じく。


10.餓鬼道巡行

町田康の作品もそろそろ単行本は読み切ったかしら、という中、2件の外食屋に足を運ぶだけで30回の連載を達成したこちらもまた読み応えあり。本書にもあるように、フツーの店の佇まいに、仏教的な思考システムを見出すという変わったしろもので、それは徹底した観察によるものともいえるし、むしろ観察するという姿勢では書けない、自然な姿勢だからこそ描けた、とも見受けられる、そこにユーモア以外の何を見出したらよいのでしょう。


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2015年観た映画5本

なかなか映画を見られなかった一年に……という体感でしたが、数えてみると60本近く見ていました。それでは世間一般人は平均してどれくらい映画を見ているのか、というと想像はつかないんですが、見る人と見ない人とで振れ幅があるんじゃないかなという気がします。映画や音楽、本の消費数は確実に減ってきているけれども、それぞれの趣味世界はディープになっているわけで、世間と趣味とのギャップはますます広がってきているんだろうと思います。

今年は例年以上に新作を多く見ました。というのも生活時間帯の都合、レイトショーをのんびり見られるんじゃね?ということに今さら気付いて利用している次第です。やっぱ家で見るよりも映画館の方が楽しく、くだらない作品でも目や耳に入る情報自体は心地よく感じられなくもないし、名作に出会う可能性という意味では辛いものがありますが、悪くもないな、という具合いです。いつもは10本出してますが、今年は観賞数が少なかったので5本で。

1.太陽を盗んだ男(1979・日)


沢田研二主演、そして今年亡くなった菅原文太が共演した一大サスペンス。教員の沢田研二が核爆弾をつくり、日本政府をゆするっつー壮大なストーリーです。最近もそういう小説が売れてるっぽくてそれっぽい映画もある気がします、ってその辺のことはよく知らないですが。
理由も目的もなく日本政府を脅し、次々とエスカレートしていく様を楽しんでいる沢田研二が、上映当時は相当ニヒルに感じられたんじゃないかと思います。現在はそうしたスリルをショートカットするように、バトロワやデス・ノートでは(どっちも読んだことないですが)アートやストーリーが介在しない形で「殺し」へ到達する姿が若者の支持を得ています。生活を取り巻く社会の変化は、人間をすっかり変質させます。

2.フィツカラルド(1982・独)

今年もヴェルナー・ヘルツォーク作品を4本見て満足しましたが、こちらは中でも有名な一本。大型の船が急流を渡り、陸を越えていくという力技?というか私ゃ何に感動しているんだっけ、と不思議な気持ちにさせられるギミック無しの大作です。
ヘルツォーク作品に多く出演しているクラウス・キンスキーは、なりきりスイッチが入ると挙動、表情、言葉、叫び、さらにあらゆる器官を総動員してパワーを放射し、存在感を自分へ一手に集中させる恐るべき役者です。実は本作、ミック・ジャガーが出演予定だったそうですが、主演予定だった役者が病気となったため脚本が変更され、ミック・ジャガーの役もポシャることになったという経緯があるそうです。ジャガーの出演シーンも残っていて別のDVDで観たのですが、キンスキーの同じシーンと比べるとジャガーをもってしても気の抜けた風船のように見えてしまう、それほどの力をキンスキーは有しています。

3.マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015・豪)

映画の新作を見る、というのはわずかな好作品を見つけるべく玉石混交のブラックボックスに飛び込むような行為でして、中にはドベと張り紙したくなるような、予告編に騙された作品なんてのもありましたが(予告編の方が優れている作品は実に多い)、そん中から何か一本、となるとベルセバの監督作品かはたまたマッドマックスの新作となりまして、ベルセバは一度紹介したし……ということで、軍配はマッドマックスに上がりました。
こんな導入文を書いていると、世間では大評判、映画史に残る至上の一品、とまで賛辞を受けとるのにてめえは何を渋っとるんや、と関西弁ですごむ人があるかもしれませんが、出し渋った理由の一つに、マッドマックスシリーズの中ではその原点となる最初のマッドマックスの方がずっと好みであることが挙げられます。マッドマックスシリーズは北斗の拳のような「2」の世界観を引き継いでいるので比べるものではないのですが、最初の作品にあった肉感や泥臭さは、丁寧にデジタル処理された新作に見ることはできません。あれだけ暴れて血生臭く見せていても、最近のアクションシーンというのは不思議とどんな作品も均一に見えてしまい、そこが物足らない原因かなと思います。
とはいえ、巧みな演出と脚本が、人の心に潜む原初的な暴力に訴えている点は間違いなく、高度に目に見える暴力が排除されている現代の社会システムにおいて、その鬱憤を晴らすように観客を熱狂させたのはまさに映画世界をリアルに伝達する行為そのもの。その行為を最も高揚させるのは戦闘シーンで流れ続ける重厚なドラム隊とメタル音楽でしょう。そしてメタルが音楽から政治性を排し自ら娯楽へ堕したように、本作の象徴ともいえる軍隊を先導するギタリストの存在は、この映画を分析させることを拒み、客に「バカな映画最高!」とツイートさせ思考停止を促す、一種のモルヒネとして観客を刺激し続けていました。

4.シリアル・ママ(1994・米)

今年からようやく見始めたジョン・ウォーターズ作品。史上最低映画として名高い「ピンク・フラミンゴ」を最初に見て、その後もいくつか見ましたが世間でもヒットを飛ばした「シリアル・ママ」を挙げたいと思います。
本作はある実在したシリアル・キラー(凶悪な殺人者)を題材にしたもの……とオープニングで紹介されますが、ウソです。ひどい。一見平穏な奥さんが、実はキレやすく次々と人を殺すという荒唐無稽なストーリーですが、決してサスペンスではありません。上映開始してすぐ観客は犯人を知りますし。それではどんなタイプの映画に属するかというと、悪質なコメディってことになるんじゃないかな。ここから先は君の目でたしかめてくれ。
シリアル・ママが街をパニックに陥れる、という平凡な脚本に終わらず、周囲の人間も段々と悪ノリになっていくところがこの映画最大のユーモア。シリアル・ママによる一大事件に大勢の人間が興奮し、法廷でのセクシャリティな取引、猥談、家族によるシリアル・ママのグッズ販売、裁判ショーにうつつを抜かす大衆、そして最悪の結末と、人々の道徳観念が堕ちていく……なぜこんな展開を見て喜んでいるのか、私は。

5.ザ・ブロブ(1988・米)

宇宙からやってきたスライムが人間を食べて成長し、巨大化するっつーゲテモノホラー。観賞注意。そんなものを紹介するとは何と趣味の悪い輩か、と思われそうですが、その汚名を晴らすべく相応の理由を説明せねばならんと思っとるところです。
本作は1950年代にスティーヴ・マックィーンが主演した「マックイーンの絶対の危機」のリメイク。ぜひ元ネタを見てからこちらを見ることをオススメします。というのも、古典的ホラーよろしく、マックイーン作品で焦らしながら見せてきたストーリーを、本作ではわずか10分で消化。つまり、スライムの存在を町の人が信じてくれない、をずっと通してきた原作の脚本を無視し、本作でははじめから町の人々の知る所となります。あれ、じゃあこの先は好き勝手やるのか、というとそうではなく、原作の設定を根底から覆す展開が待っている……そうした挑戦的な脚本に限らず、パニック作品に重要な要素であるテンポ、グロさ、突き抜け感ともに感度の高い作品になってると思います。ちょい役でジャック・ナンスも。


明日あたりに本とアルバムもいければいーなと思っています!


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華麗なるシングル盤(41)The Kinks「Drivin'/Mindless child of motherfood」

最近久しぶりに海外通販を再開しまして、一時期やたら滅法に注文してましたがようやく冷静と情熱のあいだにまで落ち着いたところです。
そんなレコ買い動乱期にThe Kinks「Drivin’/Mindless child of motherfood」のドイツ盤シングルを取り寄せいたく感動したのでこちらをご紹介します。



キンクスは活動期間が長いおかげでシングルも非常に多いのですが、中にはレア盤と目されるタイトルもあります。デビュー期のシングル2枚はとりわけその象徴的なタイトルですが、バンドとしてはアルバム「ヴィレッジ・グリーン」から「アーサー」へ移ろうとする1969年頃のシングルもちょっと高くなってます。この頃のチャートを確認するとどの国でもまともに売れておらず、本国イギリスで健闘したのは33位が最高の「ヴィクトリア」くらい。70年に大ヒットする「ローラ」まで、キンクスのウィンターリーグは続くのでした。
そんなわけでキンクスのシングルはわりかし贔屓しつつ買っていたぼくも、69年のシングルは見かけない上にたまに見ても手を出しづらい値段なので鬼門になっていたんですが、さすが当事者国では安い。ドイツ盤ですけどどの国でもチャートインしなかった「Drivin’/Mindless child of motherfood」を安価で発見しました。状態は悪かったらしゃーない、と清水の舞台から何とやらで購入&到着してみると問題なくノン・ノイズ。ラッキーです。
A面の「Drivin’」は「アーサー」収録曲。ですが、シングルではモノラルミックスが施されていて…といいつつアルバム「アーサー」もモノラル盤で出ていたのですが、当時はほとんど出回らず激レア盤扱いされてます…というわけで、「アーサー」モノ盤をほんの少し体験できる、という趣きもあったりします。




手持ちの「アーサー」ステレオ盤
果たしてレイ・デイヴィスがステレオとモノラルのどちらを所望してプロデュースしたのかは知らないんですが、キンクスでいえば…というか大抵のバンドでもそうですが、この69年頃から急激に音がクリアになるなーという印象があります。キンクスにとって「アーサー」がそれでして、トラック数が増えたのか機材の問題なのか、各楽器の分離、音の繊細さといった面で格段に進歩している感があります。
じゃ一方のモノラルはどんな音かというと、アルバムで見せているステレオの良さを踏みにじる?かのような極太一本サウンドで、ステレオで見せていたドラムを丁寧に左右へ散らしたオーバーダビングもお構いなしとばかりに中心に据え、これがドライブしてるってやつか、曲名だけに…なほどライヴのような定位で聴かせます。「You really got me」のノイジーサウンド再び、というか彼らのシングルはずっとこんな音できていたんだ、ってことを改めて思い起こさせてくれました。栄光と滅亡。

ポップスの世界ではわりかしドライブをテーマにした曲って多い気がしますね。ハイウェイ・スターとか(爆走) ドライブ系の曲はアップテンポというか元気な曲調といいますか、そして歌詞を見ると行きずりの女性とデートやらハイクラスな生活やら都会的やら、リア充を謳い全身で表現するのが一般的なドライブ曲なんだと思います。
一方のこちらは出だしからして冴えないといいますか、段々音が下がってるし。エンジンがかかりません、て感じです。それもそのはず、歌詞を読みますと、英語が苦手なので間違ってたらすみませんが、前線で戦いを繰り広げる世界情勢を尻目に田舎にドライブに行くっつーもので、「ヴィレッジグリーン」一連の曲の流れを汲んだものだと思うのですが、一向にスピードの上がらないポンコツ車のイメージ。お茶を持ってピクニックに行こう…どこでもお茶を飲むのはキンクスの歌詞によくある光景です。
B面はバンドのギタリストでありレイ・デイヴィスの弟デイヴ・デイヴィスの作品。結構偏屈なつくりでぼくは好きなんですが、アルバム未収力なんでアナログで聴くのはいつぶりか。アメリカでは「ローラ」のB面なのでわりかし聴かれてるかもしれませんが…。








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1984年生まれ。現在の住まいは千葉県浦安市。

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