8枚×3巻のビートクラブ・ボックス、ついにすべて鑑賞。1年半くらいかかりました。。。
ビートクラブは1960年代からドイツで放映していた音楽番組。イギリスを中心に、アメリカやドイツのミュージシャンなどのステージ演奏をお届け、て感じのものです。
ボックス後半の時代は1970~72年頃。サイケの饗宴は終わり、プログレ、ハードロック、グラム勢が出演者の大勢を占めていくことになります。この辺りの変遷には大きなうねりがないので、気になったところをかいつまんで書いていくことにします。(前半戦について書いたのは
こちら)
ウーマン・リブ
タイトルは大袈裟ですが、いわゆるロックバンド形態の中でも、女性をフロントに据えたグループが目立つようになってきす。It's a Beautifulday、Stone The Crows、Earth&Fire、Ike&Tina Turner、Curved Air、Renaissance……
どれも女性ボーカルを軸にしているんですが、なんと4人のメンバー全員女性というバンドがありまして、その名は
Fanny。中古レコードは頻繁に見かける人たちです。バンド名の意味を調べてみたらオゲレツでした。
曲の方は、ジャニス・ジョプリンを彷彿とさせるヘヴィなブルース系ハードロック。これがまた音がでかい。音はでかいんですけど、音ひとつひとつの粒がはっきりしているんです。この辺が女性的な繊細さなのか、はたまたそういうのは関係なくて、彼女らが高等な音楽教育を受けてきたせいなのか、その辺は分かりませんが、他の男性ハードロックにはない微妙に変わった演奏だという印象を受けました。とか何とか書きつつも、自分としてはあまり好みのバンドではありません。
D・パープル、EL&P、イエス……異質なのはむしろ有名な方たち
プログレッシブなことしながらもガンガン歪ませてドカドカするっていう、プログレとハードロックを強引にかけ合わせたようなバンドがやたら出ているこの頃。そこに歌やコーラスまで乗せるんですから、テクニック前面出しで皆さん激しく演ってるんです。
ただ、そういった路線は飽和状態というか、演歌て全部同じじゃん、とヤングメンに言われた老人が「お前らの聞いてるポップスこそ同じだわ」と言い返したりするそうですが、ハードロックのレコードをちょいちょい聞いてるぼくでも違いが分からなくなってきます。お決まりのリフがあって、ギターと歪んだキーボードのソロ勝負があって、一回静かになったらまた盛り上がる、みたいに似たり寄ったりでして…。
そんな中でもちゃんと差別化を図るしたたかな人たちがいるわけで、その連中の名を挙げると、どれも後年大成功を収めるバンドばかり。今でこそ我々はこうした有名バンドを当たり前のように並行して聞いているのですが、同時代の玉石混交とした中で聞くと、その際立ちぶりに気づくはずです。いいか悪いかは別にして、とにかく目立ちます。
とりわけ派手なステージを見せたのは
ディープ・パープル。初期曲ではちょっと目立つくらいでしたが、
「Highway Star」の演奏は路線変更でもしたのか、というくらい分かりやすさ満点の演奏になってます。原曲ではキーボードのジョン・ロードとギターのリッチー・ブラックモアが速弾きソロをしているんですが、ビートクラブではそんな七面倒なことしてられません、とばかりにめちゃいい加減に弾いてます。いい加減なんだけどもアクションは派手なもので、特にリッチー・ブラックモアはただギターを担ぎあげたり指でなぞって遊んでるようにしか見えない。そうした躍動感と単純なソロが、何演ってたんだか分からんがすごいなーと思わせる絶大な効果をお持ちでありました。
エマーソン・レイク・アンド・パーマーも上記と同じようなパフォーマンスを見せましたし、
イエスはまったく分かりやすさはないんですが(「こわれもの」より前の曲ばかり)、曲そのものが謎に満ちているし演奏がやたら速いのでこれまた目立つのでした。
じわじわ芽が出てきた本国ドイツ勢(あの有名人の意外な過去も)
冷え冷えとした感性でコアなファンを生み続けているクラウト・ロックも、この頃から登場します。前衛音楽時代のクラフトワーク、グル・グル、カン、アモン・デュールⅡ……。
そんな中今回注目したのは、
パスポートというシャレたジャズ・ロックなドイツのバンドです。クラウス・ドルディンガーという管楽器奏者がメインのインストなのですが、なんとドラムセットには、あのドイツの国民的歌手、
ウド・リンデンベルグがいるではありませんか。
そういえば、この人の音楽キャリアのスタートはドラムだった気がする…と思い検索すると、日本のドイツニュースサイトでもちゃんと紹介されてるんですね。
http://www.newsdigest.de/newsde/news/kao/3327-udo-lindenberg.html
ソロでデビューする前は、こういうところにもいたんですか。ビート・クラブでその映像を拝めるとは驚いた。クラフトワークでは、
クラウス・ディンガーと
ミヒャエル・ローターの貴重な演奏シーンを見ることもできます。
名演シーンを選びました。
Volume3
Disk-1
The Incredible String Band - Everything's Fine Right Now
グリーンな背景でほのぼの牧歌的な雰囲気ですが、それと同時に厭世観を漂わせるのも彼らならでは。
Disk-2
Patto - San Antone
貴重すぎる生演奏。映像は残念なアレンジがなされていますが…。ひねくれモード全開の名曲を高速で披露しています。
Disk-5
Slade - Coz I Luv You
T・Rexと迷いましたが、ロックの標榜してきたカリスマ性をキレイに排除したSladeの姿勢は、ひとつの転換点って感じがします。ここでの彼らの格好、髪型、オーバーなアクションひとつひとつが新たな幕開けを予感させる…。
Disk-7
Captain Beefheart & his Magic Band - I'm Gonna Booglarize You Baby
ディープ・パープル「Highway Star」直後の出番ですが、まったく分の悪さを感じさせません。堂々とマイペースなセッションを繰り広げ、独特のリズムで己を貫き通す図太さ。私生活でも見習いたいものです。
Disk-8
King Crimson - Larks' Tongues in Aspic
有名な映像なんで昔から何度となく見てきたクリムゾンの生演奏。ビート・クラブ後半のもう一つの特徴として、ダブルドラム(またはドラム+パーカス)のパターンも見受けられるようになるんですが、クリムゾンのビル・ブラッフォード+ジェイミー・ミューアの2名ほどその役割を十全にまっとうしたのはいないでしょう…。
ダリみたいなヒゲをしたジェイミー・ミューアはこの後俗世を離れてしまうので、この演奏シーンは超貴重。微動だにしないフリップ卿を尻目に様々な楽器を叩きたい放題なんですが、ちゃんと目は他のメンバーの動きを追ってます。ブラッフォードは遠慮気味ですが、ミューアがちょろまかしてる間は大事な戦力。急にフリップの速弾きが始まったり、改めて聞くとよく分からないことばっかしてますね。そしてそこがいい。
The Osmonds - The Osmonds Show
長大なビート・クラブDVDの最後を占めたのが、
オズモンズの番組ジャック。この日は60分すべてオズモンズの演奏なんです。
オズモンズは日本でもよく売れてたアイドルグループ、くらいな認識で名前しか知りませんでしたが、ヒップな連中ばかり出ていたビート・クラブからすれば異界からのグループ。
司会の例のねーちゃんが新聞を読み上げ「ビートルマニア旋風再び」みたいなことを言ってグループを紹介。甘いマスクの5人兄弟が青臭い曲を見事なコーラスワークで歌い上げる様はなかなか決まっているんですが、楽器もかなりうまい。特にドラムがすごい(^q^) キツキツの衣装を着用してはやく叩くのはとても難しいんです。
歌って踊って楽器もできる…動きまわってるせいか結構はっちゃけてて、ストラップは何度も外れるわドラムの椅子からジャンプするわ、キーボードは壊しかけるわ。どの曲もビートがしっかり効いていて、楽しいステージでした。末っ子かどうか分かりませんが、年端もいかぬ弟がプレスリーを歌うのはご愛嬌。
The Incredible String Band - Everything's Fine Right Now
Slade - Coz I Luv You
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