「魂(ソウル)のゆくえ」
著者:ピーター・バラカン
初版:2008年(1989年出版のものを改訂増補)
発行:アルテスパブリッシング
ページ数:285
定価:1800円
読みやすさ
(文章) :★★★★★
(構成) :★★★★★
読みごたえ :★★★★☆
初心者にも安心:★★★★★
マニアック :★★★★☆
オリジナリティ:★★★★★
オススメ度 :★★★★★
すごい久しぶりに音楽関連の本を読み切りました。ロンドンっ子の音楽マニアとしても有名なブロードキャスター、
ピーター・バラカンさんにとって初めての著書だそうです。
タイトルにはソウルとありますが、ソウルという題目に縛られることなく、目次にある通り、ゴスペル、R&B、モータウン、サザン・ソウル、ニュー・オーリンズR&B、ファンク、ジャズ・ファンク・・・と、アメリカのブラックミュージックについてゴスペルを起点として書かれたものです。
自分がバラカンさんを認識したのは日本テレビの深夜に放送してた(今でもやってるかな?)CBSドキュメント、みたいなタイトルの番組でコメンテーターとして毎週出ていたのが最初。アメリカのドキュメンタリー番組で扱った内容について解説している姿なのですが、その後、レコードコレクターズなんかでも自分のコーナーを持っているのを見たりして、強烈な音楽ファンであることを知ります。
バラカンさんといえば、実に誠実で丁寧に喋るイメージがあるのですが、その調子が本の文章にもにじみ出ています。それでも、さらっと好き嫌いをはっきり書いているのもさすがで、やはりディスコの多くは苦手、産業ロックについては思い出したくもないそうです。
「ソウル・ミュージックを知らない方のための入門書を」ということでスタートした本書。まさに自分はソウルの流れはほとんど知らない身で、せいぜいがビート・グループと関わりの深いモータウンを少々、というくらいだったので丁度よく図書館で見つけて借りたわけです。
基本的には時系列でソウル音楽を追っていくのですが、この一冊に書かれていることすべてがひとつの流れとなるような読みやすさです。読みやすいということは、自分の頭にもスイスイと入っていくので、気持ちよく読み進めることができました。
どうしてこれほど読みやすいのか・・・。いわゆる初心者向けの本にも色々タイプがあると思うのですが、データや事実関係に執着するあまり、聞いたこともない曲名やチャート、その他数字などの情報がゴチャゴチャ入り乱れて読みづらくなる場合があります。それがこの本では、データ的な記載が本文にはあまりなくすっきりしており、重要な歌手やレーベルの変遷に重点を置いて、伝記的な読み物のように書かれています。そこに、著者のリアルタイムでの経験が盛り込まれることで、音楽への所感が盛り上がりを増して描かれているので、ただのお勉強な本にならない読む楽しさがあるのだと思います。
最後まで読んだ自分なりの解釈ですが、ソウルという括りはロックのそれと非常に似ている気がします。たしかにソウルとロックはルーツ、ひいては音楽性で相違があるのですが、音楽のタイプを超えたところで聞き手が受ける強いインスピレーションが「ソウル」であり、「ロック」なのではないかと思います。違いであったはずの音楽性も、スティーヴィー・ワンダーやマイルス・デイヴィス、プリンスらといったミュージシャンの尽力(?)もあってロックへの接近もあり(もちろんロック→ソウルもしかりですが)、この辺りもソウル音楽の変節と深いかかわりがあるそうです。
本書では手に入りやすいCDガイド、DVD、それに日本語訳されているソウル関連の本も紹介されています。今回図書館での借り物で読みましたが、ぜひ手元に置きたい一冊です。
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