タイトル:ビニール・ジャンキーズ~レコード・コレクターという奇妙な人生~
著者:ブレット・ミラノ
訳者:菅野彰子
初版:2004年
河出書房新社
ページ数:230
定価:1600円
読みやすさ
(文章):★★★★★
(構成):★★★☆☆
読みごたえ:★★★★☆
初心者にも安心:★★☆☆☆
マニアック:★★★★★
オリジナリティ:★★★★★
オススメ度:★★★★★
ロック関連本の紹介も30冊目になりました。今回は
「ビニール・ジャンキーズ」という本なんですが、その名の通りレコード・コレクターとして道を踏み外してしまった人々へのインタビュー集、といった感じでしょうか。発売当初からこの本の存在は知っていたのですが、タイトルがあまりに胡散臭いし、DJ読本みたいのだと読んでも分からないしなぁ、と思い敬遠し続けていました。ところが、最近古本屋で見つけて立ち読みしたところ、ロックも含め多岐に渡るレコードを扱っているような感じだったので読んだという次第です。
レコード・コレクターへのインタビュー集なんて色モノに決まっているかと思いきや、音楽ライターでもあるアメリカ人の著者が最も聞きたがっていることは「どうしてコレクターになったのか」「どうしてそんなに集めるのか」「なぜレコードなのか」といった、彼らの原点を探ることに集約されているせいか、コレクターからの返答が彼らの音楽に対する価値観、自身の異常性、人生観といった言及が多く、非常に興味深い内容になっていると思います。 登場するコレクターの中には、
REM、ソニック・ユース、ジェリー・フィッシュといった有名バンドのメンバーも登場するので、ミュージシャンの視点から見た蒐集論もこれまた面白い…
これに近い趣向の本の日本バージョンも実は出ていて、雑誌「レコード・コレクターズ」で連載されていた
「レコード・コレクター紳士録」をまとめた本があります。
連載されていた当時はこのコーナーも好きでレココレをよく読んでいたので、内容がまる被りなのを懸念してこの本自体は買っていないのですが(ここ2、3年くらいはすっかりご無沙汰ですが…)、両著で読む限りの日本とアメリカのコレクターの違いがあって、特に大きな違いはレコードを探す土壌…アメリカでのレコード探しというのはとにかくワイドでワイルド。黒人レコードのコレクターなら南部の田舎に行き、小さなレコード屋、または倉庫のある古い民家に出向き「お宅にシングルレコードはないか」と聞く。すると「屋根裏にたくさんある」と言われ行ってみると天井まで届きそうなくらいの古いレコードが姿を現す…といった具合。日本も一昔前ならありえたのかもしれませんが、今ではそうした場所はだいぶ限られてきてるのではないでしょうか。でもコレクションをキレイに扱ってるのはやはり日本の方かな、と感じました。そういえばまたしてもレココレですが、SP盤蒐集のコーナーみたいのがあったと思うんですが、あれは全国のリサイクル店やおうちを周るという感じでしたね…。
本の構成としては、一応細かく章立てされてるものの、どれも一続きの内容となっているので、一気に読み進めるのがいいかもしれません。それと、レコード界ではおなじみのようなネタが説明なしにポンポン出てくるので、ポピュラー音楽をあまりお聴きになってない方には読みづらいかもしれません。
本の中では色々な金言が登場しますが、お気に入りを一つだけ。
著者
「一部のコレクターにとって、コレクションとは、単にレコードを集めることだけではない。それは、自分がどのような時代の大衆文化のなかで生きるのかを選びとることでもある。」
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