アナログ・ミステリー・ツアー(1962~1966)
湯浅学
2013年
青林工藝舎
223ページ
1500円
アナログ・ミステリー・ツアー(1967~1970)
湯浅学
2013年
P-Vine Books
319ページ
1900円
読みやすさ
(文章) ★★★☆☆
(構成) ★★★★☆
読みごたえ ★★★★☆
初心者にも安心★☆☆☆☆
マニアック ★★★★★
オリジナリティ★★★★★
オススメ度 ★★★★☆
レコード本もここまできたか、と驚愕の一冊。ビートルズ各国盤をひたすら聴き比べてその違いを検証しようという試みは、アルバムはもちろんシングル、4曲入りEPにも範囲を広げて2冊に分けての大ボリュームとなりました。各種カートリッジやリード線なんかも変えながらの試聴となったので果てしない作業となり、先に答えを書いておきますと、結局は音盤に著者たちがガイドされていた、ということになったそうです((((;゚Д゚))))
はじめは「スゴい盤を探そう!」と意気込んでみたものの、やりはじめると一筋縄ではいかないことがたくさんあることが判明。聴き比べをはじめてずーっと音がイマイチだと思っていた国内盤が、ある日日本製カートリッジを使ったらとても良かったとか、そうした機械との相性の問題がたくさん出てきてしまう。それだけならまだしも、盤のコンディション、その日の体調や季節なんてのでまた印象も変わってしまうのは、どうにかできる問題でなく。
そんなわけで明確な答えは出ませんでしたが、あらゆる手段を講じてたくさんの盤を聴き比べたという足跡が文章や写真として残ったことは大きな一歩ですね(?)。レーベルデザインは同じなのに、スタンパーが違うだけで律儀にも画像を並べる狂気ぶり!
ぼくのビートルズ音盤遍歴というのは、まず小さい時に白い帯の頃のCDを集めて、中~高にかけて国内盤のAPやEASを適当に拾い、その後半くらいにモノラルの存在を知ってそれからモノラルを英盤や米盤で集めて今に至る……といった具合なので、各国盤に関してはほとんど分かりません。
それでも楽しく読めるもので、それはなぜかというと、著者の他にもう一方選者がおり、半分以上はその2人が聴いた感想を述べながら盤を取っ替えていくというスタイルになってるからだと思います。そのやりとりが軽妙というか、オーディオ的な型にハマった表現になってないので、真剣に音の違いを読み取るんではなくて、そのトークを傍観するってな感じになるんです。音楽関連のトークショーに行ってるみたいな体験ですかね、ぼくは行ったことないけど(^q^)
その対談を読み進めていると、だいたいどの盤が評価高いみたいだな、というのは分かるもので、2冊とも読み終わる頃には各国の印象がしっかり刷り込まれてます。
というわけで、ぼくの記憶の中から特に評価の良かった国を抜き出すと、ニュージーランドとインド、ということになるようです。やっぱりインドはシタールの音がいいそうですよ。
この、インドはシタールの音がいいって、そんな都合のいい話が……と思われると思いますが、というかぼくもそう思うんですが、著者の方々はその国のカッティングエンジニアがビートルズの変化をどう理解していたか、という仮定の話でそれぞれのレコードの音を評価しているんです。
例えば、ラバーソウルあたりの日本オリジナル盤は、日本ではビートルズがまだアイドル的な可愛い音に仕上げようとしているせいか、高音が強い。ビートルズの音楽性の変化をカッティングエンジニアが理解できていなかったんじゃないか、みたいな。こういった考え方が実際に各国盤の音の違いにどれだけ反映されるかは分かりませんが、面白いな~と思いますね。ジョージの曲でのシタールは、本場インドからしたら余裕を持ってそのサウンドを受け取れるわけですから、ある意味では英国盤以上に深みのある音に仕上げられる……かもしれない。真偽は別としてまして、そういう可能性を想像してレコードを拾うっていう楽しみ方が生まれますよね。
マニア向けであることは間違いありませんが、ちょっとレコードをはじめた方にもいいかもしれませんね。レコード界隈のヤバさを直に感じ取れるシリーズでもあります。
無題
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