「エクスペリメンタル・ミュージック 実験音楽ディスクガイド」
著者:フィリップ・ロベール
訳者:昼間賢・松井宏
初版:2009年
発行:NTT出版
ページ数:341
定価:2400円
読みやすさ
(文章):★★☆☆☆
(構成):★★★★★
読みごたえ:★★★☆☆
初心者にも安心:★★☆☆☆
マニアック:★★★★★
オリジナリティ:★★★★☆
オススメ度:★★★☆☆
著者はフランス人の音楽ライターで、この本はタイトル通り、実験音楽のディスクガイドとなっているんですが、序文での実験音楽についての見解からして言葉が難解で、自分がアホの坂田だからなのかもしれないですが、たしかに言葉に勢いがあって信頼はできるのですが、意味はどうもさっぱり… おそらく、実験音楽を象徴するような具体的な事象が次々と書かれていて(ここからすでに難しいんですが)、自分の体験を経て趣味形成され、難解と思われていた音楽が自分の求めていたものになることもある…くだらないものは、批判ばかりの連中や自分のコレクションしか聴かない年寄りに任せましょう、音楽は聴かなければ始まらない、とのこと。
なぜこの序章からして読むのが難解なのかといえば、自分は当然訳本を読んでるわけですが、学生の頃に読まされたような哲学書みたいな文章で、抽象度が高いということ。そして、文脈が音楽形成のルーツだとか、音楽ジャンルなどによる包括的な解説がまったくなされていないこと。おそらく、この本においてそうしたメイン・ストリームだとかジャンルだとかは優先順位の低いもので、一つ一つの作品について絶対的な説明をすることに心を砕いているようです。
一応ディスク・ガイドなので、興味深い作品が実にたくさん登場するのですが、全部読むのは至難の業。そこで、作者も書いていますが、好きなところを読んでくれて構わない、とのこと。古くは1921年録音のものから2007年録音のものまで。アーサー・ラッセル、ダモ鈴木、灰野敬二、ジム・オルーク、AMMの名前も。ジョン&ヨーコ、ヒュー・ホッパー、PILなんて名前もあります。もちろんNWパンク・ジャズの人の名前なども。
しかし、ある日本人アーティストの説明に追記があり、本人から訂正を求める手紙が来たそうで、まるで事実と違うことばかり書いてある、との書面が載せられていました。あら、他のページの情報の信ぴょう性はどうなっちゃうの、という感じですが、こういうのも載せちゃうところはある意味誠実さを感じないでもないですが…。
読むのには苦労する本ですが、おそらくここにあるような文脈で実験音楽を聴く人にとっては理解できるシロモノなんじゃないかと思います。音大生とかは実験音楽が勉強科目になってる場合があるようですが、この本では音楽的な説明は少ないので、そうした人向けというわけでもなさそうです。かといって、スピリチュアルな感想が書かれているわけでもない。先に書いたように、作者が書くとおり「聴かなければ始まらない」ということで、ジ作品ごとの説明を見てなんとなく気になったのがあればまずは聴いてみる。それからこの本での解説を読んで照らし合わせてみるのが本書の楽しみ方なのかも…。
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