著者:ジェリー・ホプキンス
訳者:きむらみか
音楽之友社
1987年
464ページ
読みやすさ
(文章) ★★★★☆
(構成) ★★★★☆
読みごたえ ★★★☆☆
初心者にも安心 ★★★★☆
マニアック ★★☆☆☆
オリジナリティ ★★☆☆☆
オススメ度 ★★★☆☆
デヴィッド・ボウイのディスコグラフィは大体分かるのですが、バイオグラフィについてはまとまったものを見たことがない、ということで古い本ですが図書館にあったので借りてみました。しかしすごい分量…読み終えるのは大変でした。
ありがたいことに、自分の知りたかったヒットするまでの期間について多めにページを割いています。全464ページのうち、「Space Oddity」でチャートインするまでが100ページ強くらいでしょうか。アルバムで言えば「レッツダンス」を出すあたりまでです。よく知らなかったRCAにたどり着くまでのレーベルの渡り歩き、そしてそこに至るまでの人脈などについて、一つの流れとして描かれます。マネージャーやバックをつとめるミュージシャンとか。そして「ジギー」以後についても、どういったことに身を砕き、音楽界隈以外でどのような人物と交流していたか、などなど。ボウイの行動をテンポよく追えるようになってると思います。
ご存知のように、ボウイという人はアルバムを出す都度まるで別のミュージシャンかのような変身を遂げています。モッズからフォークへ、グラムからファンク、そしてベルリンから洗練されたダンス音楽へ…。作風がこれほど紆余曲折を経ている大物もなかなかいないでしょう。ヒーローズを発売した際の自身の発言で
「僕は、みんなにとって実に予測可能な人間なんだと感じた。そのことが僕をウンザリさせたんだ。僕は自分の嫌いな、大衆人気ど真ン中コースに乗っかろうとしていた…僕は、創造的で芸術的な成功を欲し、かつ必要としていた…最高にバカバカしいことを言える体勢になってきたよ。『もしもみんなが僕のレコードを買うのを止めてくれたら心底嬉しい。そうなったら僕は退いて、何か他のことにかかれます』ってさ」
という具合いなので、この本にもありますが、RCAのお歴々は大変だったことでしょう…。
ボウイが音楽を始める頃の年齢にさかのぼると、彼の演奏は他を凌駕する表現力に満ちあふれていたようだし、タイプとしてはアメリカでいえばヴァン・ダイク・パークスやランディ・ニューマンのような知的なものだったそうですが、そうした音楽性を身につけた経緯はここでは分からないですね。スウィンギング・ロンドンに興味を持って、楽器練習してステージ立ってみたら評判良かった、くらいな流れになっていて、彼の表現力の源泉みたいなものはどうだったのか。よく言われる兄の精神状態(本書が印刷された頃に兄の訃報が入ったそうです)、父親の死といったことにも触れてはいますが、彼の表現活動への結び付きという視点はここでは皆無です。特にそういう結び付きがないと判断したのかどうなのか…。
では淡々と書かれているものかというとそうでもなくて、セリフの言葉遣いが「~だってんだヨ!」みたいな懐かし少年少女マンガみたいな表現でちょいと息巻いていたりしています。昭和62年てこんな時代でしたか…。出てくる関係者やミュージシャンがみんなこの口調なんで、真剣に読む人でなければこれはこれで楽しめます(^q^)
そんな茶目っ気があるわりには、客観的な立場から見た構成になっていて、アルバム評、ツアー評各国各紙のものを賛否両方について付記しています。ただ、ボウイ自身が自分の発言や写真などについてしっかり管理してきたらしく(インタビューを許す人物や時間はボウイ自身が厳選していたみたい)、本人のインタビューはナシ。たまにあっても昔の雑誌等から拾ったもののようですので、その辺は期待しないように…。そのため史実の信頼度においては読み方次第というところですが、中立な視点を持とうという書き手の意図は伝わってくると思います。
ボウイはたくさんバイオグラフィが出ているので、最近のも読んでどのあたりが違うか、っていうので比べるのもおもしろいかもです。
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