Tears for Fearsは英国NW勢の中では孤高の存在というか、ソングライティングのセンスがずば抜けて高かったと思います。プロフェッショナルでも素人でも、誰もが一発当てるチャンスのあった混乱の80年代。音楽のるつぼとなっていた時代のただ中にいながら、確かな存在感を示していたんじゃないでしょうか。しかし、その研ぎ澄まされた曲群は自意識の高さゆえ生み出されたものと言えるかもしれません。プレッシャーとメンバー間の不和から、作曲やスタジオワークに非常に長い時間を費やす日々。諸刃の剣とも言える過敏な感受性を持っていたのだと思います。
特に有名な曲はやはり「Sowing the Seeds of Love」で、The Beatles風の楽曲を壮大に演じた名作。ここでの音は、94年にThe Beatlesの新曲として出た「Free as a Bird」にも少なからぬ影響を与えていると思います。
そして、ブリットポップを予感させる要素もありますよね。ただ、その後あまたのバンドが発表したThe Beatlesらしさの出てる曲たちよりもずっと洗練されてるし、彼らが内なる叫びを吐き出してきた結果、新たな境地で自分たちの人生を引き受けたような重みがこの曲にはあって、新しい波の萠芽であると同時に、最高の作品でもあるんじゃないかと思います。愛の種を蒔く…。
ちなみにモービル盤は2作目「Songs from the Big Chair」も出てるってことで、このLPが良い感じだったので2作目もいこうかなーと思います。
前のブログでもボウイは結構書いた気がしますが、このアルバムはまだのはず…いやはや個人的には1,2を争うほど好きな作品…といっても、不思議とこのアルバムのUK盤というのが欲しいのになかなか見つからなくて、あれば大した値段でもなさそうなもんなんですが、かなり長い間手にしてませんでした。ヒーローズもウチの近所ではあまり見かけないです。よく見るのはこのアルバムの一つ前のロジャー。それまではずっと国内盤で聴いてきたわけですが、ようやくオリジナル盤を手にしました。 中音にごっそり集め、篭った空間での音ながら音は細部までよく響く生っぽさがあって、いわゆるこれ以前のベルリン三部作に近い印象を持ちました。ただ、楽曲の指向性がそれまでとまったく異なり、メタリックなギターが展開されるので、受ける印象はそれまでとまるで違うという場合もあるかもしれません。実際、プロデューサーもバンドメンバーもまったくといっていいほど一緒なのに、ベルリン4部作とは言われないですね。83年の「レッツダンス」に挟まれ、宙ぶらりんな位置づけなのかもです。このボウイもそうだったんですが、海外レコードをウィキで見ると、一枚一枚のカテゴリーが違うことが多いので、面白いなぁと思ってます。このアルバムはpost punk, new waveとか書かれてますが、一つ前のロジャーはart rock, world musicと表記されているという…他のミュージシャンで調べているときも大抵こんなことがあります。自由に誰でも編集できる場ではありますが、英語圏の人々は細かなカテゴライズに意欲があるってことなんでしょうか。ヒーローズなんてkrautrockて書かれてるぞ。思い切ってます。
こんな長く書いてると読んでくれる人なんてそうそうおらんのでキリトリ線配置。そんなわけでオリジナル盤で聴くと、身体が震えるような素晴らしさを体感したというお話です。大袈裟だなライアー。と言われるかもしれませんが、このアルバムに関しては国内盤あまり良くないと思います。オリジナル盤を基準にすると、ボウイの意図した音とは程遠いのでは。とかはともかく、日本語の語りがイキナリ入るという「It's no game」で幕開けする本作、仰々しい語りに、日本人の我々からするとげんなりした人がいるかもしれませんが、異国の人になったつもりで「語感」をとらえるように聴くと、演劇性な語りに感じられて、こういうのも演劇に理解の深いボウイが細かく注文を付けた結果なのかも、という想像も。語りの内容は、ボウイが英語で歌っているのを直訳して喋っているんですが、特に詩的でもセンチメンタルでもない、あれま、という内容(爆) しかしこれもまたボウイらしさ。