Tears for Fearsは英国NW勢の中では孤高の存在というか、ソングライティングのセンスがずば抜けて高かったと思います。プロフェッショナルでも素人でも、誰もが一発当てるチャンスのあった混乱の80年代。音楽のるつぼとなっていた時代のただ中にいながら、確かな存在感を示していたんじゃないでしょうか。しかし、その研ぎ澄まされた曲群は自意識の高さゆえ生み出されたものと言えるかもしれません。プレッシャーとメンバー間の不和から、作曲やスタジオワークに非常に長い時間を費やす日々。諸刃の剣とも言える過敏な感受性を持っていたのだと思います。
特に有名な曲はやはり「Sowing the Seeds of Love」で、The Beatles風の楽曲を壮大に演じた名作。ここでの音は、94年にThe Beatlesの新曲として出た「Free as a Bird」にも少なからぬ影響を与えていると思います。
そして、ブリットポップを予感させる要素もありますよね。ただ、その後あまたのバンドが発表したThe Beatlesらしさの出てる曲たちよりもずっと洗練されてるし、彼らが内なる叫びを吐き出してきた結果、新たな境地で自分たちの人生を引き受けたような重みがこの曲にはあって、新しい波の萠芽であると同時に、最高の作品でもあるんじゃないかと思います。愛の種を蒔く…。
ちなみにモービル盤は2作目「Songs from the Big Chair」も出てるってことで、このLPが良い感じだったので2作目もいこうかなーと思います。