鮮烈さは朽ちることなく Swinging Blue Jeans「Blue Jeans a' Swinging」
Swinging Blue Jeans「Blue Jeans a' Swinging」(1965・UK)
オリジナル盤はビンテージものとして相当な値段が付けられる本作はSwingin Blue Jeans(以下SBJ)の唯一のアルバム。そんなわけで手持ちはCD、しかもこれは今日ブックオフで見つけて買ったという…(爆)
このアルバムの形では案外出されておらず、手を変え品を変え、といった具合に様々なジャケでベスト盤的に組まれています。それに、この手持ちのCDも93年頃に出てらしい国内盤で、ジャケット、曲順、曲目はリアルタイムの国内盤仕様になっているんだそうです。英国盤より2曲多く、曲順も違っています。
で、この度ようやくアルバムを聴いてみると、その完成度の高さに驚きました。ビートルズと同じリヴァプール出身のSBJ、正真正銘のマージービートが炸裂。日本盤仕様の順番で申し訳ないですが、冒頭の曲はThe Kinksのデビュー曲でもあるLong tall Sally。奇しくもほぼ同時期に同じ曲を録ってたということになるのでしょうが、The Kinks贔屓のワタクシも、SBJバージョンの方が良いのでは、と思ってしまうほどの迫力と搾り出すような歌心。
8ビートだけが持ちネタではありません。さらにかっこ良いのがOl'man Moseというジャジーな、アメリカのボードヴィル風な曲。キャバーンに出入りしていたバンドの曲をアレンジしたとのこと。オリジナルアルバムではトップの曲のようで、アルバムの頭にふさわしい完成度の高いナンバーです。その後ロカビリーと呼ばれるような多彩な曲群が軒を連ねていて、Gerry and The Pacemakersのような別格さがあるように思います。
バンドを引っ張るのはリード・ギターとボーカルのRay Ennisという人物。ヒット曲You're no goodより後は大きなヒットに恵まれなかったそうで、シングルは出し続けたものの1966年にメンバーは交代。この時加入したテリー・シルヴェスターは、1968年にグレアム・ナッシュの抜けたHolliesに加入しています。
Peter Godwin、Duncan Browne、Sean Lyonsの3人で結成されたMetroのファーストアルバム。ジャンルの壁を軽々越えて、すべてを内包するような独自サウンドに数ヶ月前に聴いて以来完全に虜となっていたわけです。多様な音楽性を含みながら難しさがなく、ピーター・ゴドウィンのささやくように歌うメロディは甘美といった具合。音楽性の広さもさることながら、グラムやプログレといったような当時のロック的なジャンルのラインをも度々侵すようなところがあって、そういったジャンルというのは精神に付随するものだと思っているので、そうした最も面倒な枠にもとらわれない身軽さがあるんじゃないかと。でもキレイなコーラスがバッチリ入ってたりして、イギリスらしさには満ちていますね。当時から国内盤も出ていたようで、日本でもそこそこの知名度があったように思います。
先日、ランニング用ウォークマンを手に入れたのは2つ前のエントリの通り。今日は休みだったので、そのウォークマンをつけて、ステージングのみてくれを良くするために体を絞るミック・ジャガーのごとくランニングしてました(本人がランニングしてるかは不明)。そこでシャッフル再生で聴こえてきたのはクイーンのJazzに収録された「more of that jazz」という曲で、これはロジャー・テイラー作。そこで何となく思いを巡らせたのは、恐らくこのアルバムタイトルはこの曲名からきているであろうということです。これには前科があって、バンドのサードアルバム「Sheer Heart Attack」は、後年のアルバム「News of the world」に収録された同名曲が、Sheer Heart Attackのセッション時にタイトルだけ採用されたといういきさつがあったとか。ややこしい話ですが。実はこのSheer Heart Attackという曲もロジャー作。あとこれはうろ覚えですが、「News of the world」というタイトル(最近盗聴問題でも話題になったイギリスの新聞と同名)や、同作のジャケットもロジャーが持ち込んだものだったような気がします。何で読んだのか忘れたので確認のしようがないのですが…。わかる方は是非教えてください。
80年代に入ってもロジャーのタイトル・センスは秀でたものがありまして、代表格が「Radio Ga Ga」という曲名。子どもが発音していた擬音を参考にして考えたタイトルだそうで、語呂の良さにライヴでは合唱の定番、さらには現代をときめくLady Ga Gaなんて芸名の元ネタにもなる一大発明となりました。
それともう一つのロジャー作のシングル「A Kind of Magic」というタイトルもRadio Ga Gaに続いてファンタジックなイメージに溢れる素敵な文言だと思います。もしかしたらイギリスでは何かの使い回しとなっている言葉なのかもしれませんが、同名の楽曲や歌詞を見かけたことがないので、やはりオリジナルなんでしょうか。
また、「華麗なるレース」収録の「Drowse(邦題:さまよい)」という曲名は、個人的にはピンク・フロイドの「Meddle(邦題:おせっかい)」と同じような、何か垢抜けないかっこ良さを感じるタイトル。でもDrowseの訳は「まどろみ」だそうで、「さまよい」という言葉は本来ないそうですが、許容範囲という感じですね。フロイドもクイーンも東芝だし。特に意味はありませんが。