近所の映画館のレイトショーにて「ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール」見ました。
あのベル&セバスチャンの人が監督した作品、つってもぼくはベルセバをちゃんと聴いたことがないんですが、一連のジャケットを見ての通りビジュアルには一貫したこだわりがありそうですから、映画もやはりネオアコ系甘酸っぱい青春もの仕立てです。とはいえこの辺の層というのはポップスオタクと申しますか、そういう言説がちょらちょらと顔を出しているので、そのあたりについて紐解けたらいいなと思います。
まずはあらすじを書いていますが、予告編動画の通りミュージカル色が強いのでフツーに演奏&ダンス&ビジュアルに身を任せる、って具合いにも楽しめます。
【ストーリー】(オチには触れません)
主人公の美少女・イヴは精神病棟に入院しているが、自由を求め何度も脱走する。その折にミュージシャン活動をしているギタリストのジェームズと出会い、ジェームズは彼女に作曲の才能を見出して友達のジェシーとともに音楽活動を始める(ここまでが案外長い…)。
バックバンドも大勢に膨れ上がって青春を謳歌する3人だったが、ちょっとした気持ちのズレからそれぞれが離れてしまい、イヴは放蕩した末に精神病棟へ連れ戻される…。
舞台は現代のスコットランド(オレンジ・ジュースやジョセフKの名前も出てきます)。主な登場人物はバンドを始める3人ですが、その中でも重要なポジションに置かれているのがイヴとジェームズです。この2人がくっつきそうでもどかしいっつー展開なんですけど、そこは置いときまして。
ジェームズはひ弱そうなギタポ少年で、しかもポックスのウンチクが得意といかにもなネオアコ男子。彼はレコードを出すことを夢見て音楽活動に精を出しますが、その野望はというと「ポップス史に小さな旗を立てたい」と控えめです。男子たるもの目指せミリオン、とでも言いたくなりますが、ある場面で彼はこんな発言を。
「イギリスのポップスは1969年以降進化していない」
1968年はサイケと英国のポップ感覚がマッチして様々な名盤が生まれた年であり、それはスコットランドでも同様の評価を受けてるみたいですね。それに対して女の子たちはそんなの関係ないじゃん、って感じで反論する、ありがちな口喧嘩が繰り広げられます。それでもジェームズはヒット曲を生み出したミュージシャンは「神に認められたんだから、神に近いんだ」と最大限の言葉で尊敬を表し、自分もその中に割って入れたら、なんて気持ちでいるみたいです。
この辺がネオアコ勢の忸怩たる思い、ってのが表れていると思ってまして、あの時代の音楽は超えられないけど、それでも音楽で認められたいという欲求が見られるんじゃないかと思います。
ストーリーの節目でラジオ放送の音声が入るんですが、そこで議論されるのは「ロックの神格化」についてでして、ニック・ドレイクやカート・コバーンは早世したから伝説になれたんだ、みたいな話を2人のDJが合間に論じていきます。このことについてジェームズを含め登場人物は無関心ですが、精神疾患を患い日々不安と戦うイヴは、登場人物の中で唯一、死に近い存在かもしれません。仮にそういう設定だとするならば、ジェームズが彼女の才能に驚嘆し、イヴという名前からしても、そして物語の中でイヴ宗教を絡める話もあり、そんなわけでイヴは音楽の神様なのかもしれない…しかし、そうだとすると最終的におかしな方向へ発展するので、目の付け所がシャープでない可能性があります。
ここからはちょっとだけネタバレになりますが、イギリス青春ものは「ウィズネイルと僕」といい「さらば青春の光」といい似たような終焉を迎えますね。小ネタでは、Left Banke「Pretty Ballerina」の米オリジナル盤をかけるシーンあり。他、ダイエットシーンでスミスの「肉食うな!」のTシャツ着てます。
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