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4番、サード、いたち野郎

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やはりレイ・デイヴィスは良い、と思った事案発生

またしてもご無沙汰でした。いやはやお疲れモードなので、休みを利用して久々更新…。レコやらは色々聴いてはいたのですが、折角なのでちょっと違う感じで。

最近、久々にThe Kinks「Soap Opera」というアルバムを聴いたのですが、改めてその素晴らしさにジーンときたところでして、それはなんでかというと、今でこそ、当たり前のように名盤カタログには「コンセプトアルバム」なんて言葉が躍っているわけですが、それを達成することの難しさをこの時局に改めて感じているためでした。

というのは、ツイッターをちょいちょい見ていると、日本のある有名なバンドのメンバーのつぶやきが紹介されていて、その内容は「最近、周りから原発をなぜ歌詞に入れない?と言われることが多い。原発について歌わなきゃロックじゃないのか」みたいな感じでした。

ずっと前にも前のブログで書いたことかもしれませんが、ロックは社会的領域の中で、いくつかの立ち位置に属する人たち同士の闘争である、という見方があるそうで、しかし個人的には、広い意味では捉えることができても、この理論だけでは埋もれてる素晴らしいモノが見つけづらい、とも思っています。 しかし、上記のような状態はまさにある領域とある領域の闘争であると言えます。

上記のバンドの人がそんなことを言われはじめたきっかけは、ネットでもちょっと話題になっていた、あるミュージシャンが動画サイトで流した原発に関する歌がまたたく間に広まったことに始まるようです。なんでさっきからミュージシャンの名前を隠すかというと、検索されるのがアレなので(爆) その歌の評判というのは、非難するものも多数ありましたが、賞賛するものの中には「これがロックだ!」とか「勇気がある」という類のものが多かったわけで、まさにこうした感想はロックをある領域の中のものとして捉えているのだと思います。俗な言葉で言い換えれば「反体制」「運動的」なエリア。

そしてこうしたエリアの人々の中には、震災直後に作られた「応援する歌」といったものを「偽善的」「心に響かない」と切り捨て、それがエスカレートすると、先に述べたバンドの人が言われた「なぜ原発について歌わない」と言い、別の領域を非難する「闘争」が生まれる…。これは、僕が体感した結果、こんな感じでした、という具合なので、当てはまるかどうかはまた人次第かもしれませんが、僕の感想としてはこんな感じです。

音楽の枠をとっぱらったはずのロックが、精神論的な意味合いの中で一定の枠組みができてしまうというのは皮肉なもので、「これぞロックだ」と言えば言うほどどんどん矮小化されるような気がしてしまいます。
非難している意見の中には「原発ダメだと歌ってるけど代替案がない」というのも多かったのですが、3分ソングで資源の起承転結を歌うなんてのはちょっと頭でっかちなわけで、まぁ影響力を考えたらきやすく歌うな、ということかもしれませんが…。

最初に戻って「Soap Opera」。会社勤めの退屈な生活を続ける現代人を皮肉ったコンセプトアルバムですが、それをどう打開したいいかという具体策は示されません。ただ、最後に「僕らの音楽は止まらない」という歌で終わります(アルバムの内容についてはキンクス・サイト KINKS-SIZE KINKDOM をご参照ください)。この曖昧なメッセージは不親切なわけでなく、人々の内面についてよく考えた作者、レイ・デイヴィスによるメッセージで、これをヒントと捉える人もいるかもしれないし、自分への励まし、失っていた思いを起こさせる、などといったものかもしれません。多くの人へ発信するものだからこそ、色々な意味に取れる言葉でいい。そこには「応援する歌」でもあり「反体制」な意味合いも取れます。それに比べると、今回騒がれた歌の周辺に起こった事態は、視野の狭い世界で巻き起こっている言い合いな感じに見えてしまい、改めて「Soap Opera」の良さを感じたというわけです。

今回、歌った人が今までのキャリアでどれだけ原発に関するメッセージを放っていたかは知りませんが、一貫した思考を表現し続けるというのは本当に難しいことで、それを40年以上、現在まで表現の形をバンドに限らず変えながら、しかしブレることなく作品にし続けているレイ・ディヴィスという人はやはり素晴らしい。「皮肉屋」という一言では片付けられない奥深さとがむしゃらな姿勢、長きに渡り興味が尽きることはありません。

しかし、明確な感じで「反体制」演ってないと「ロックじゃない」と言われるうちは、「会社なんてつまらん、私はスターです」なんてナヨナヨ歌っているのはやはりロックに非ず、とお叱りを受けるのでしょうか。







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Comment

無題

  • Pandaboy
  • 2011-04-19 12:22
  • edit
この度は「Soap Opera」の解説に、サイトをご紹介いただきましてありがとうございます。

今回のいたち野郎さんのこの記事、なかなか考えさせられますね。
僕は、いま話題になっているこの曲については、言葉通り「反体制」と言われれば、それはその通りだけれども、世の中みんなが反原発に目を転じつつある現状の中では、膨大な民意を背景にした、むしろ大衆迎合的な歌なんじゃないか、と皮肉な目で見てしまいます。(ただし、彼は以前から反原発的な立場ではあったようです)

翻ってキンクスですが、「ソープオペラ」ではテレビ局からの依頼を受けて、平凡なサラリーマンの夢物語を描いたり、「ヴィレッジ・グリーン」では世の中の流れに反して「古き良きものを大切にしよう」と歌ったりと、世間から「あれはロックじゃない」と言われそうな曲を、敢えて作って来たようなところがありました。
しかし思うに、この「流れに逆らう」というやり方、これもまた重要なロックの一部なのではないでしょうか。

だから、今回のこの原発の歌に関しては、「ロック」として評価されるべきは、歌そのものというよりも、音楽産業の中に身を置きながら、こうした歌をYoutubeに投稿した、そのミュージシャンの姿勢の方かと思いますし、キンクスが「会社なんて~」とナヨナヨ歌いながら、やはりロック以外ではあり得ないのも、その精神性に依るところが大きいのではないか、と愚考しておる次第です。

無題

  • いたち野郎
  • URL
  • 2011-04-19 22:06
  • edit
パンダさん、コメントありがとうございます♪ 久々にキンクスで長く書くつもりが大分脱線した内容で…とほほ。

いやはや、自分の至らぬところを埋めるような鋭いコメントいただき、恐縮&関心しきりです。パンダさんの書いた通り、僕もこれは大衆迎合的なモノだと感じました。とはいえ悪い意味でもなく、彼の以前からの立場からしたら、世論が盛り上がりを見せたのはいい機会だと思ってのこのタイミングかもしれません。 ただ、外からはそこに「反体制」という安易なキーワードが付与されたような気がして、本人にそのつもりはなかったにしても、youtubeに突然上げるというゲリラ的なやり方が、いわゆるロック的な見方をされるのに一役買ったのだと思っています。

そしてキンクスの歌ってきたことやアティチュードというのももちろんロック以外の何ものでもないファクターであって、それもやはり精神性からきてるんですよね。
それでもキンクスの歌うテーマが他と違ったのは、大衆を十把一絡げにして相手するような歌でなく、大勢に共通する意識を歌っているにも関わらず、個人の内側をえぐるような意味合いを持っているからだと思うんです。

こんなことを書いていてふと思い出したのですが、古い別々のインタビューで、デヴィッド・ボウイとピート・タウンゼントが「ヒトラーはロックンロールの創始者だと思う」という共通の発言をしていました。一人のカリスマと扇動される大衆、という構図がロックなんだ、ということのようですが、キンクスはそうなりきれなかったところもまた魅力なのかもしれません。「ヒトラー的な」ロックの固定観念に外れたところにいるマイノリティな人々を救うのもまたロックに違いないですね。
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