昨年最も聴いたのはスミスだった、と表明したところで、もう少し掘り下げてみましょう。
と言いつついきなり話は変わりまして、ずっと昔に読んだ本に、ロックのドラムまたはベースが、ヒット曲の重要な要素となることはほとんどない、みたいに書いてありました(その例外としてクイーン+デヴィッド・ボウイ「アンダー・プレッシャー」が紹介されていたと思います)。それを書いてた人は誰だったかな?たいした人ではなかったと思いますが…爆
じゃあギターとボーカルがよければヒット曲になるのかというと、そうとは限りません。世の中みんながサイモンとガーファンクルってわけじゃないですから。ヒット曲となるためにはもっと大きな枠組として、イントロが印象的であることが大事なんじゃないかと思います。
ご安心ください。これはぼくの戯言なんかではなくて、ちゃーんと偉人が実証してるんです。アトランティック・レコードの重鎮である
アーメット・アーティガンは、フィル・コリンズのシングル用のテープを聴いた際「イントロのドラムはもっと派手なのがいい」と勝手にいじり、大ヒットにつなげたそうです(ちなみに当のコリンズは嫌がっていたらしい)。
なぜ彼がイントロにこだわったかというと、ラジオで曲がかかる際、イントロの良し悪しでリスナーが続きを聴いてくれるかが決まるからだそうです。
有名曲のイントロは、たしかにその曲の肝でもあります。
ユー・リアリー・ガット・ミーとか、
ハートに火をつけてとか。出だしでピンとくる、ってのはコンサートでも盛り上がりますよね。イントロの一音が出た瞬間、お客が歓声を上げるあの感じ……。
スミスもシングルが多いせいか、手の込んだフレーズを効かせるイントロ曲が多いと思います。一番人気のある
「This Charming Man」は最たるものでしょう。サビでウォーキングに変わるなど行きつ戻りつ自在なベース、サビ最後に細かい芸ながら重要なフレーズで迫るドラムともどもカッコイイ絡みが聴けます。あとは花束を振り回すモリッシーをご堪能ください。
冒頭で、ドラムはヒット曲の要素とはなりえないという話を出しましたが、スミスに関しては
「Queen is Dead」という曲はドラム抜きに考えられません。イントロでタムを殴打しまくりでして、これを聴いたジョニー・マーが「チャーリー・ワッツだ!」と叫んだそうですが、何度聴いてもチャーリー・ワッツには思えない。イギリスの若者の感性はどうなってるんでしょう?これはアルバム冒頭だから、ひねりの効いた出だしにしよう、っていう魂胆なのかもしれませんが。
そんなわけで「ヒット曲はイントロが大事」かもしれんという話でしたが、翻って我が日本のヒット曲では、さほどイントロが浸透していない気がします。J-POPはもちろんですが、昔の歌謡曲や演歌も全然イントロが分からない。カラオケの時に皆さん苦労するでしょう?知ってる曲なのに、どこから入るか分からない、みたいな。
小室哲哉が何かの対談で「皆さんぼくの曲、サビのフレーズの後どんな歌詞か分からないでしょう?でもそれでいいんです」みたいなことを話してまして、日本ではサビのワンフレーズを覚えてもらえるようにすることが重要なんだってことが分かります。じゃあなんでそんな戦略になるのかというとよく分からんのですが、新曲を扱うメディア媒体はサビから流すってことなんでしょうか。ミュージックステーションのランキングとか、CDTVみたいなテレビ番組で。日本ではラジオから人気が出て口伝えに、っていうイメージはないですしね。イギリスはラジオは盛んでしたし、アメリカなんてDJに渡す賄賂が横行して大問題になってたくらいですから、こうした文化の違いも、曲の差異に影響しているのかもしれません。
Rhinoのオフィシャルビデオ。
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