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書籍 「ビートルズ日本盤よ、永遠に」



「ビートルズ日本盤よ、永遠に 60年代の日本ポップス文化とビートルズ」
著者:恩藏 茂
初版:2003年
発行:平凡社
ページ数:270
価格:1800円

読みやすさ
(文章)    :★★★★★
(構成)    :★★★★★
読みごたえ  :★★★☆☆
初心者にも安心:★★★☆☆
マニアック  :★★★☆☆
オリジナリティ:★★★★☆

オススメ度  :★★★★☆

いやはや、3月中は多忙を極めまして、すっかりご無沙汰しておりました。他の方のところもとんと見ることができず。そんなわけであまり音楽をかけることもなく過ごしていたのですが、移動中にやたら集中して本を読むようになったので、こんなのを図書館で借りて読みました。

ビートルズ日本盤! なんて文字がタイトルで踊っていますが、いわゆるレコードの資料みたいなものではありません。ビートルズの登場から解散までを、日本でリアルタイムで体験した著者(他にもビートルズ関連の著書が多数)が、その頃の経験と周りの状況等を踏まえ、日本でビートルズはどう捉えられていたのかを記述したものです。

まず驚いたのが、ビートルズの日本での売り出し方。それまではヨーロッパやアメリカの歌謡、それに映画音楽などのインストが洋楽市場の中心だった日本(洋楽市場自体、その割合は今よりずっと大きかった)で、音楽市場がないとまで思われていた英国のグループを売り出すのか。東芝音工の担当者は相当頭を悩ませたそうで、なぜかというと、誰に聞かせても「こんなの当たるわけない」と言われたから。
そこで、音楽性で訴えるのを諦め、英国でいかに社会現象になっているかを勝手な想像を交えて(爆)喧伝し、視聴会でもサクラの女の子を忍ばせて叫ばせたり、売上の数字の桁を付け足し、わざと記者の見えるところに書類を置くなどなど、今でいうステマみたいなことを堂々と繰り広げていたそうです。まぁステマなんて今さらですよね、実際。ある意味、ネット時代の今よりもえげつない、というか大丈夫なのか、って感じです。

それだけやっても、ビートルズ・ファンの中学生なんてそうそういなかったとか。クラスに1人いればいい方だとか。そんな状況を一変させたのが、ビートルズ来日の一報。で、場所はあの日本武道館。いまとなっては、あの大きな玉ねぎの下でライヴをやるのがミュージシャンのステータスになっていますが、当時はそんな前例がなく、日本の武道精神宿る日本武道館で、外国人のニィちゃんにバンド演奏させるとは何事か、となったとか。その急先鋒が、なんと正力松太郎氏、というより、記者にそんなことを吹聴されたそうで、当時日本武道館の館長でもあったらしく、ここではやらせない、と言ったとかで報道が一気に過熱。保守派の政治評論家VS新進気鋭の作家でビートルズ論争させたり(この中身が驚くほど稚拙)、どの週刊誌もこのことでいっぱいになったそうです。
はじめは武道館使用に消極的だった正力氏ですが、主催が読売新聞ということで、なんとなく折れて日本武道館での公演が実現。当日のてんやわんや狂騒曲はご承知の通り・・・。

こんな体験談以外にも、日本盤LPでの曲順や編集盤についてのレコード会社のエピソードも多く、ビートルズでいう前期についての話が充実しています。日本と英米での熱のずれ具合などが、本当によく分かって面白いです。
後半のSGTあたりからはあまり日本盤の話も出なくなり(ここから英国盤に準じたせいでしょうか)、一般的なビートルズの音楽性の変化だとかそんな話が中心に。なぜかアビーロードのところでは「最高傑作、特にB面」と突然評しはじめ(それまでも何曲かにちゃちを入れてましたが)、最高傑作ではないという意見はこの際無視、となぜか強行。一体何がそうさせたのでしょうか。僕はB面をさほど良いと思ったことがありませんが…。

そんなわけで、個人的には前半と後半のテンションの落差がちょいと気になりましたが、来日騒ぎまでの流れはふむふむ、と楽しく読めました。



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