「60年代ブリティッシュ・ビート」
原題:BEATBOOM!
著者:デイヴ・マクアリア
訳者:東郷かおる子
資料制作:赤岩和美
シンコーミュージック
初版:1995年
ページ数:267ページ(付録に多数の資料ページあり)
価格:2100円
読みやすさ
(文章):★★★★★
(構成):★★★★☆
読みごたえ:★★★★★
初心者にも安心:★★★★★
マニアック:★★★☆☆
オリジナリティ:★★★★☆
オススメ度:★★★★☆
60年代のマージー・ビートその前後についての本なら、やはりこの本が定番でしょうか?この本の推薦者として、最初にジェリー・マースデン(ジェリー&ザ・ペイスメーカーズ)の名前が挙がっているように、60年代のブリティッシュ・インヴェイジョンを中心としたロック・ムーヴメントについて、大変信頼できるストーリーが描かれています。 マージー・ビートについてのことだと、やれ黒人音楽の影響が~…と、ここからやたら長く書かれてる本が多かったりしますが、そうした情報を漏らさないながらもサクサクと時代が進んでくれるので実に読みやすいと思います。ビートルズ以外にもスポットライトが当てられ平等に描かれている様は清々しいものがあります。
時代を通した中で、当時活躍、または一発屋などのグループを各々紹介していくという手法で、各グループのどういった曲がチャートのいい位置にいたのか、そうしたことに焦点を絞りながら書かれています。この頃はバンドが生まれてはまた去ってゆくといった状況で、どの曲が売れたのか、というのは有意義な情報だったりします。
もうひとつの焦点が、常にアメリカ・チャートを念頭に入れて書かれているということです。ブリティッシュ・インヴェイジョンと呼ばれるアメリカへの侵攻があったとはいえ、イギリスのどのグループもアメリカという巨大なマーケットでひと山当てたいと必死になっていたのが実情です。たとえば、イギリスでは途中からチャートインから遠ざかったデイヴ・クラーク・ファイヴはアメリカでは長い間人気があったため巨大な富を生みだしたグループの一つです。それはあのビートルズにも言えることで、「ビートルズ1」なんてチャート一位の曲を集めたアルバムがありましたが、あの中にも幾つかアメリカでのみチャート一位になった曲があったと思います。
逆に、イギリスでは人気があったもののアメリカではヒットできなかったデイヴ・ディー、ドジー…なんかはあまりもうかったとは言えなそう(爆)
そんなわけで、ポップ・ミュージックができたてのあの時代、右も左も、誰にとっても分からない中で、信頼できるのはある意味でお金だけだったかもしれないですね。いつまで続くかなんて保障もないし、ビート・ブーム自体が廃れてしまうかもしれない。そんな中にいた若いミュージシャンにとって、イギリスだけでなくアメリカのチャートというのも大きな意味を持っていたのではないでしょうか。
個人的に唯一難点だと思うのは、やや繰り返しが多いこと。全体の説明の中で出てきたグループが、後のグループ別の項でもまた同じように描かれています。初めてこの時代に触れる読者には、反復学習になるのかもしれませんが…(爆) とにもかくにもジェリー・マースデンが認めるほどの名著であることには変わりないと思います。
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