80’s ポップス 愛される100曲
著者:北井康仁, 山崎智之, 濱田廣也
初版:2010年
発行:P-Vine Books
ページ数:239
価格:1900円
読みやすさ
(文章) :★★★★☆
(構成) :★★★☆☆
読みごたえ :★★★☆☆
初心者にも安心:★★★☆☆
マニアック :★★★★☆
オリジナリティ:★★★★★
オススメ度 :★★★★☆
そういえば80’sってポップス/ロックのシーンでは大変賑やかな時代だったのに、自分が聞くのは限られていて、個別に好きなミュージシャンを挙げる方が早いんじゃないかってくらいのレベルです。リアルタイムではなかったのでいわゆる一発屋もそんな知らないし、ディスコ系はもっと知らない、という具合でした。しかし、この本を読むとそうした雑多で瞬発的で、社会背景も少なからず関係した80’sポップという時代をゆるく包み込んでいた空気に、なんとなく触れることができたような気がします。
基本的にはビルボードチャート上位作品が多く掲載されてますが、それだけに限らないのがこの本のマニアックぽい視点で、例えば英米で記録なしも日本でヒットした
ヒューバート・カーの
「エンジェル07」や、
スミス「ハウ・スーン・イズ・ナウ」も米チャートではランク外ながら、米国へ打って出たシングルとして100選入り。1枚につき2ページ割いてますが、ソロワークスや同プロデューサー、同系統ミュージシャンによるシングルなどを脚注で補足していて、シーンの広がりが具体的に分かるっつー仕組みです。
この頃の音楽て、なかなかロック雑誌みたいのではそういう文脈で取り扱われないので、今となってはこうした少しマジメな本も貴重かもしれません。ずっと前から「産業ロック」なんて言われてるくらいだし、こういう十把一絡げの言葉が、この時代のポップスを見る目を曇らせているのかも。
80’Sサウンドといえば、派手なシンセ、打ち込みの強いビート、ノせるベースライン、分かりやすいメロディ…この本でも各所で書いてありましたが、ベテランミュージシャンの転換期としても機能したこの時代。
ジェファーソン・スターシップ、シカゴ、ジェネシスに
ボウイなどなど。80’Sならではのコマーシャルな音というのはたしかに存在したんだと思います。ただ、そのアプローチがいくつもあるってことに、この本を読んで気付かされました。今挙げたようなベテラン勢のリバイバル、映画とのタイアップ、CMソング、MTV、バンド・エイドに端を発するチャリティーもの、ニューロマにゲイカルチャー、往年の名曲のカバーにサンプリング、レゲエやAOR、メタルにネオアコなどなど…。メディアと音楽を結ぶつながりが複雑になり、マーケットが拡大した結果なんでしょうか。これほどポップスがメディアやファッション/スタイルと親和性を持って市場を席巻するなんて、もうないかもしれませんね。
僕がこれを読んで初めて知ったことを列挙すると…
◆クリストファー・クロスは60年代からツェッペリンやジェスロ・タルの前座で活躍。フランク・ザッパに傾倒していた。さらに、80年代には2万ドルもするギターシンセのシンセアックスを買った。他に買ったのはアラン・ホールズワースのみ。
◆34歳2児の母・アネーカが歌う「ジャパニーズ・ボーイ」という曲が英国1位を記録。
◆ロジャー・テイラー「炎のスピリット」が国内盤シングルで出てた。
◆バックナー&ガルシアのアルバム「パックマン・フィーバー」でマスタリングを担当したのはボブ・ラドウィック。
うーむ、まだまだ知らないこと、知らない曲がたくさんです。精進します。
ついでに、この本で紹介された曲の中から、知ってるものに限りますが好きな曲を5つ選んでみました。
Hubert Kah「Angel 07」
Tears for Fears「Everybody wants to rule the world」
F-R David「Words」
Aztec Camera「Oblivious」
Dire Straits「Money for Nothing」
Hubert Kah「Angel 07」
………
これはもしかして、アメリカ勢がひとつもない…。
いくらブリティッシュ・インヴェイジョン第二弾、それに諸外国の頑張りがあったとはいえ、アメリカ栄光の80’Sですらヨーロッパ贔屓。選んでいて最後までそのことに気づかなかったので、こればかりはどうしようもないす。好みの問題ですね。
ちょいとアメリカにも目を向けると、やはりR&Bが強いですね。そして現代にも通じる音楽性。たまーにメジャーミュージシャン目当てでアメリカン・アイドル見ると、イマドキのR&B風の曲も、80年代からあまり変わってないのかな、と思ってしまいます。その80年代だってモータウンの影響が強いと書いてありますし、長い歴史の中で根本がしっかりしてるってことなんでしょうか。
これからボロボロ段ボールなエサ箱を漁る楽しみが増えそうです。
この「100曲シリーズ」は他のテーマでも出てるみたいなので、気になるものは読んでみたいですね~。
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