Quicksilver Messenger Service「Solid Silver」(1975)
60年代末の西海岸サイケに位置するグループですけど、類型化しがたいサウンドがまさにサイケ感覚あります。初期グレイトフル・デッドやジェファーソン・エアプレインのように放埒な印象を受けるものとはどうも違うのですが、とらえどころのないコード展開と東洋風のフレーズ、それらすべてを一手に引き受けるように包み込むエコー…ここにニッキー・ホプキンスがいたという奇跡(?)!とにかく面白いグループです。
メンバーの微妙な変更を経ながら活動していたようですが、ちょっと休止を挟み最盛期のメンバーを集めて作られたのがこの「Solid Silver」です。シュリンクに貼られたシールにもジャケ上部にも「Original Quicksilver Messenger Service」とあるので、これは結構売り文句だったのかもしれません。
まずフロントジャケット…眩しそうにしながらも粋な表情で、マッチョな船乗りに扮したメンバー。ヴィレッジ・ピープルではありません。両面ジャケ見ても(撮り忘れましたが)インナー写真見ても、Dino Valentiがやる気なさそう…気のせい?それはともかくとして、かっちりしたアメリカンな曲がだいぶ多いようにも思えますが、そのチョイスは相変わらず節操がない感じ。ノリノリスピーディでシャッフルなラヴソングで始まったかと思いきや、CSNのような懐かしサンフランシスコ・フォークソング、そしてなぜか軽快ロックンロールも。別の意味でとらえどころがなくなりました。たは…。
このグループの核であり、本作で久しぶりに戻ったギターのJohn Cipollinaがここでかなり弾いてくれてます。やたら音のでかい硬質のエレキ・リード…いつになく暴れ気味なGreg Elmoreのドラムもなかなか目立ちます。
スタジオの変化とか音の流行とか色々要素があったのかもしれませんが、何と明るいサウンド。そこにこれまで通りエコー効かせて西海岸風なものだから、オリエンタル空気とマッチしていたDino Valentiの声が何とも言い難い浮き方をして…
ここまで書いてきたのを見ると、まるでよくない作品かのような文章になってますが、そんなことはありません。このナチュラルなギャップが実にいいんで以前からよく聞いています。バンドに何らアクションを起こさせなかったこのラスト作品を含め、バンドの節操ない感じが好きなんだと思います。
なんて長々と書きましたが、前のブログでも扱ったような気がしてきました…たは。