クイーンのアルバム「A Kind of Magic」の収録曲はすべて「ハイランダー」のために書き下ろされ、そのほとんどが使われています。インタビュー映像のうろ覚えですが、ハイランダーの監督ラッセル・マルケイがクイーンに1、2曲作ってほしいと要請したところ、メンバーからはそれをはるかに超える数の新曲が提案されたそうな。果たして監督にとってそれが本当にありがたかったかどうかは謎ですが(爆) こうして多くのクイーンの曲がハイランダーで使われることになったということです。
バンドがかかわった映画の中では最も商業的に成功したものではないかと思います。ストーリーは興味深いもので、現代と中世(過去)の二層を織り交ぜるように話が進みます。主人公の男は大昔に生まれながら不老不死の種族であるため、現代まで生き永らえている剣士。しかし、ある時を境に、その種族同士で剣を交えなければならない掟があり、それが現代の市街地で突如繰り広げられます(不死だけど首をはねれば死ぬらしい…)。生き残ることが許されるのはたった一人という過酷な状況で、誰が勝者となるのか。
話自体は惹かれるものがあるんですが、色々と気恥ずかしいシーンや整合性の厳しさから決していい映画とはいえないかな…というのがぼくの感想です。ということでクイーンの曲がどんな風に使われているかってことなんですが、以前に見た「フラッシュ・ゴードン」と違い、楽曲を大胆にサンプリングして流しているのに驚きました。オープニングで流れる「Princess of the Universe」(PVで主演のクリストファー・ランバートを出演させ、映画のシーンと合成させている)ではメロの楽器のパートだけを繰り返し流したり、A kind of magicも楽曲から切り離した音を使っているようです。OPはバンドのコーラス術がサスペンス的な空気を醸し出していてなかなかいい感じ。他のいくつかの曲はカーラジオなどに忍ばせたりして登場しますが、特筆すべきはフランク・シナトラで有名な「New York, New York」のカバーが聞けるトコでしょうか。わずかな時間ですが。
Quicksilver Messenger Service「Solid Silver」(1975)
60年代末の西海岸サイケに位置するグループですけど、類型化しがたいサウンドがまさにサイケ感覚あります。初期グレイトフル・デッドやジェファーソン・エアプレインのように放埒な印象を受けるものとはどうも違うのですが、とらえどころのないコード展開と東洋風のフレーズ、それらすべてを一手に引き受けるように包み込むエコー…ここにニッキー・ホプキンスがいたという奇跡(?)!とにかく面白いグループです。
メンバーの微妙な変更を経ながら活動していたようですが、ちょっと休止を挟み最盛期のメンバーを集めて作られたのがこの「Solid Silver」です。シュリンクに貼られたシールにもジャケ上部にも「Original Quicksilver Messenger Service」とあるので、これは結構売り文句だったのかもしれません。
まずフロントジャケット…眩しそうにしながらも粋な表情で、マッチョな船乗りに扮したメンバー。ヴィレッジ・ピープルではありません。両面ジャケ見ても(撮り忘れましたが)インナー写真見ても、Dino Valentiがやる気なさそう…気のせい?それはともかくとして、かっちりしたアメリカンな曲がだいぶ多いようにも思えますが、そのチョイスは相変わらず節操がない感じ。ノリノリスピーディでシャッフルなラヴソングで始まったかと思いきや、CSNのような懐かしサンフランシスコ・フォークソング、そしてなぜか軽快ロックンロールも。別の意味でとらえどころがなくなりました。たは…。
このグループの核であり、本作で久しぶりに戻ったギターのJohn Cipollinaがここでかなり弾いてくれてます。やたら音のでかい硬質のエレキ・リード…いつになく暴れ気味なGreg Elmoreのドラムもなかなか目立ちます。
スタジオの変化とか音の流行とか色々要素があったのかもしれませんが、何と明るいサウンド。そこにこれまで通りエコー効かせて西海岸風なものだから、オリエンタル空気とマッチしていたDino Valentiの声が何とも言い難い浮き方をして…
ここまで書いてきたのを見ると、まるでよくない作品かのような文章になってますが、そんなことはありません。このナチュラルなギャップが実にいいんで以前からよく聞いています。バンドに何らアクションを起こさせなかったこのラスト作品を含め、バンドの節操ない感じが好きなんだと思います。
なんて長々と書きましたが、前のブログでも扱ったような気がしてきました…たは。