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書籍「ヴェルベット・アンダーグラウンド&ニコ」




「ヴェルベット・アンダーグラウンド&ニコ」
著者:ジョー・ハーヴァード
訳者:中谷みなみ
初版:2010年
発行:P-Vine Books
ページ数:217
定価:1890円

読みやすさ
(文章):★★★★☆
(構成):★★★★★
読みごたえ:★★★☆☆
初心者にも安心:★★★☆☆
マニアック:★★★☆☆
オリジナリティ:★★★★☆


オススメ度:★★★★☆


アンディ・ウォーホルのデザインしたバナナのジャケットで有名な1967年のアルバム「The Velvet Underground&Nico」についての本です。
作者の方はスタジオ経営やプロデュース、ミュージシャンの録音に楽器で参加するなどのマルチ・ミュージシャンで、ダイナソーJr.やレディオヘッドといった人たちとも交流があるんだそうです。

ページ数を見てわかる通りかなりライトな本で、かなり読むのが遅い自分でも2日ほど頑張って読み切れるくらいです。といっても手抜きでピーヒャラ書かれているわけでもないようで、参考文献や資料からの引用が結構ありまして、著者も言うようにロックに関する本は出展が記されていないなどいい加減なものが多いそうなので、そうならないよう注意を払って書かれたそうです。そして、このアルバムを聴くときはレコードで是非聴きましょう、とのことだそうですが、本人たちがゴーサインを出したモノ盤は高いのでそれはCDで体験を、というまえがき的なものがあります。

内容はベルベット・アンダーグラウンドのファースト・アルバムのことについてオンリーではありますが、何も録音の日付だとか、使用楽器だとかスタジオだとかについて細かに書かれているわけではありません。というのも、このアルバムが出たのが1967年、話題に登ったのはずっと後の話で、その頃に当時の関係者たちがインタビューで聞かれる頃には本人たちの記憶も曖昧になってしまったそうで、食い違う話ばかりなんだそうです。そんな謎が残るところもアルバムが伝説化した要因の一つかもしれませんが…。 それに著者もそうしたデータベース的な本にするつもりはまったくなかったらしく、ミュージシャンとして、というかそれ以上に鋭い主観的な視点でこの作品を評価しているところが多く、個人的には好感が持てるような内容だったのですが、ここは読む人それぞれによって思いが違ってくるかもしれません。

章立てはざっくりしたものでわずか3つに分かれています。このアルバムとバンドに関する基本的な情報、収録曲について、そしてアルバム発売後の動向、といった具合です。半分以上を1章に費やし、残りのほとんどを2章、3章についてはほんの数ページ。あまり時系列にこだわらない書き方をしているので、そこが若干読みづらく感じました。


概観はこんなところで、著者のこのアルバムへのスタンスについて…。著者は、ポップ、ロック・ミュージックのほとんどが「工芸品」と考えているようです。しかし、0.1%の確率で芸術そのものに到達する作品があり、「Velvet Underground&Nico」が位置するべきところはそこだ、ということだそうです。
そんなわけで、ここでの楽曲に関する考察は、あくまで芸術作品の探求という前提で進められなければならない、と…。
このことについては長ったらしくなるせいか詳述されていないのですが、この本にはメンバーによる楽曲への特異なアプローチが次々と出てくるので、そうしたところに著者は「芸術」と捉えるべきものがあると考えているのかもしれません。メンバーの一人、ルー・リードは学生時代は英語専攻ということもあり、ビートニクな小説を愛読していて、そこで見られる表現へのアプローチを音楽でもやる、というところがこの作品にあったそうです。また、既存のレコード音楽と比較する場面も多く、66~67年のアメリカン・ロックや家庭向けポップスは(ヒッピー色の濃いものも含めて)脳天気なモノが幅を利かせていたということで、その辺との違いも書いてあったり。そして、収録曲の「ヘロイン」や「毛皮のヴィーナス」が、性倒錯だとかヘロイン絡みという当時としてはあまり類を見なかった(ただし過去のブルーズ・ナンバーには尊敬すべきドラッグソングがあるとのこと)テーマをストレートに出す前衛さはもちろんあったものの、それ自体はバンドや作品の本質ではない、とメンバーの発言を絡ませて書かれています。例えば「ヘロイン」はルーが感じたままを装飾なく音に換えているがためにスリリングさがある、という具合で、本当はそのことについてはもうちょい書いてあるのですが、こうした彼らのアプローチこそが時代性を超越しているゆえ、芸術作品に成り得る、ということなんじゃないかと思います。

他には一部では無能呼ばわりで書かれることもあるアンディ・ウォーホルの役割…。見てただけな上に悪いアイデアを持ち込んでバンドを分解させたとか評判も悪いですが、本業がプロデューサーの著者はここでのウォーホルの仕事を絶賛。著者曰く、プロデューサーには幾つか種類があるそうで、その中でベストなのはミュージシャンの個性を反映、引き出させてくれる人なんだそうです。どうやら過去の関係者の発言をたどると、ウォーホルは録音の知識は皆無だったため、録音卓の辺りに座って演奏風景を見ていただけだそうです。そして、いいと思うテイクにオーケーを出す、といった感じだったようで…。つまり、彼が初めてヴェルベッツの音をクラブなどで聴いて好きになったサウンドをそのままレコードで再現しようとした、と…。

そして、このアルバムで取り沙汰される歌詞のセンス…。たしかに文学から派生したようにつなぎ合わされたルーの書く歌詞は別格な存在感があるようですが、当の本人は歌詞を聴かせるつもりは毛頭なかったらしく、歌詞カードがないのはもちろん、歌い方があんななので聞き取りがかなり難しいんだそうです。生前のスターリング・モリソンもインタビューで、最近の音楽誌はリスナーに歌詞を読むよう力説しているけどそんなことは必要ない、とのたまうほどで、本人たちの興味はサウンドの方にあったようです。そんなわけで楽器の工夫や、チューニングの方法についてなども曲によってはわかる範囲で書かれています。

販売元のMGMがセールスに消極的だったこと、販売の遅れやジャケット裏の写真についてクレームがついたことでレコードがベスト100にランクインするチャンスを逃したことなど不運に見舞われた本作ですが、最後の短い第3章で著者はこう書いています。

「ヴェルヴェッツのことを扱った本は、彼らの商業的な失敗と音楽的改革者としての役割を対比させた書いている場合が多いが、ぼくは両者には大した違いはないと思っている-このアルバムがいまだに売れ続け、またほとんどすべての同時代の音楽に比べ、はるかに大きな影響力を後続に与えているのを見ると、”商業的”とはいったい何のことなのか、不思議に思えてくるのだ-」 (208P)

上記のことは自分もなんとなくそんな風に考えていたので、プロの方が同じように書いてくれていて救済されました、という大袈裟なお話。




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