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書籍 「ニック・ドレイク~悲しみのバイオグラフィ」

JUGEMテーマ:音楽
 

ニック・ドレイク~悲しみのバイオグラフィ
ストレンジ・デイズ
著者:パトリック・ハンフリーズ
初版:2005年
ページ数:341
価格:税抜き2667円

読みやすさ
(文章)       ★★★★☆
(構成)       ★★★★★
読みごたえ     ★★★★★
初心者にも安心 ★★★★★
マニアック     ★★★★☆
オリジナリティ   ★★★★★

オススメ度:    ★★★★★



1969~72年にかけてアルバムを三枚残し、わずか26歳の若さでこの世を去った英国のシンガー・ソングライター、ニック・ドレイクの人生を追ったバイオグラフィ。26歳…僕で言えば、今頃僕は「Pink Moon」を作っているというところか…(大爆) まさかニック・ドレイクの書籍の日本語版なんてものが出版されようよとは…ストレンジ・デイズ様、お疲れ様です。これは当時発売してすぐに買いました。

このニック・ドレイクという人は、育ちはいい、頭がよく、スポーツができ、イケメンで、背が高くて、ポーカーフェイスでクール、そしてギターがうまく、作曲も歌もできちゃう人だったのですが、どういうわけか彼の音楽人生は華やかなものでなかったし、本人は自分の音楽が成功しないことを悩んだ…そして、薬物多量摂取による、謎の死…まさにサブ・タイトル「悲しみのバイオグラフィ」の通りの人生といえるのではないでしょうか…。

商業的にはさほど成功しなかったものの、彼の死後数年してから、本国イギリスから人気がジワジワと出始め、いつからかはよく分かりませんが、ここ日本でもよく知られた存在に。今ではアナログのオリジナル盤はかなり高い値段で取引されていて、人気の高さをうかがわせます。

生存中彼が残した三枚のアルバムは、三枚とも大名盤で、しかもどれも性質がかなり異なるんですね。室内クラシックを被せたファースト・アルバム「Five Leaves Left」、バックにバンド形態やコーラスなどを大胆にフィーチャーしたセカンド・アルバム「Bryter Layter」、一部ピアノを除いて、彼の奏でるアコースティック・ギターと歌のみで構成されたラスト・アルバム「Pink Moon」... そして、この本を読んでいると、この三つの作品の性格の違いは、当時の彼が抱いていた心情とクロスするものがあるのかもしれない…そういう風にも思えます。


ニック・ドレイクは、生存中にインタビューや写真といった類のものはほとんど残さなかったそうで、この本は当時彼と係わりを持っていた数少ない人たちから集めたエピソードを中心に綴られていますが、ドレイクの人生の歩みとともにエピソードが小出しに紹介されるような感じで、かなり読みやすかったと思います。
本の中でドレイクについて語る人たちが共通して言うことは、ドレイクはとにかく大人しく、口数が少なかったということ。特にその性格は、彼が音楽に仕事として携わるようになってから激しくなり、中には彼から友人の家を訪ね、一時間も共に時間を過ごしながら、一言も会話をせず帰ってしまったり、彼の静かな音楽性が、イギリスでの賑やかなライヴ会場では聴き入れてもらえないことに空虚感を覚え、ステージにすら立てなくなったりもしたそうです。 特に、彼にとっては野心に満ちた作品であったセカンド・アルバム「ブライター・レイター」が売れなかったことが彼には大きなダメージとなり、本格的に人前に姿を現さなくなったらしい…
こういったバイオ本では、本人と関係のあったアーティストの証言などが引用されることが多いのですが、ドレイクは他のアーティストとは交流を持たなかったらしく、その種の証言は一切なかったと思います。

彼が家族の進めによって診断を受け、今でいううつ病である、とお医者さんに言われたそうです。しかし、うつ病の原因が分かり始めたのは最近の話で、1990年に入ってからの話。本当に彼がそうした病気に悩まされていたかどうか分かりませんが、恐らく処方された薬の種類、または投薬量は適切なものではなかったと思われるそうです。
家に引きこもりになっていたドレイクが突然、ふらっとスタジオを訪れ、新作を録音したい、と言い出した…その結果生まれたのが、ラスト・アルバム「Pink Moon」(大傑作!)。独自に世界を達観した感のあるこの恐るべき作品を残し、処方されていた薬の大量摂取により、突然息を引き取った…それが自殺か事故かは分からないそうです…。


ニック・ドレイクがいまや凄い人気だな~と実感したのは、数年前にYoutubeで「River Man」か何かのドレイクの映像を見たとき(動く映像ではなく、写真を切り貼りしただけの映像)、アクセス数が5万近くいっていたんですね。コメントから察するに、恐らく多くがイギリスの方たち。このことを彼が知ったなら、果たしてどのような反応をしたでしょうか…。
ずば抜けた才能やカリスマ性がありながらも、現実の社会構造に翻弄され、早世したニック・ドレイク…もしまだ彼の作品を聴いたことがない方は、是非ご検討を…

書籍以外では、彼のバイオグラフィを映像と共に追うDVDも出ています。これは単品ではないのかな?ボックスCD買ったら入ってました。30分くらいの短いものです。彼の映像そのものはほとんど皆無で、多くは証言者が登場するものとなっています。なので、まずは内容も重厚なこちらの本をオススメいたします。

作品の紹介はまたいずれ…



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Comment

過去記事に失礼します。

  • Kinks girl
  • 2015-10-13 17:46
  • edit
いたち野郎さん、こんにちは。
何年もまえの記事にコメントしてしまって、
ご迷惑でしたらごめんなさい。
こんな本があったのですね〜

実は最近ニック・ドレイクを知り衝撃を受けたところです。
曲を聴いて久しぶりに泣いてしまいました。
以前のブログの私的10選にもピンクムーンを選ばれていますね。

相変わらず、キンクスに夢中なのですが、
最近ニック・ドレイクやジュディ・シルなどSSWあたりも聴いています。
先日、ジュディ・シルについて情報を探したら、ある洋楽ブログでいたち野郎さんのお名前を発見しました!(数年前の記事ですが 苦笑)
CDショップでアルバイトされているときに、お店の売り上げのために
ジュディ・シルを買われたとか(笑)
面白いエピソードですね〜
いろいろ幅広く音楽を聴いていらっしゃるのも納得ででした〜

最近、いろんな情報を求めさまよっているのですが、はじめは自分と音楽の趣味の合う人が結構いることに感激したのですが、
最近は意外と少ないかもと思っています。
いろいろ探っていると知っているひとに辿り着いたりするので(笑)
先日もアマゾンのレヴューでブログをチェックしている方を発見してしまいました(笑)意外と狭い世界かもしれませんね〜。

でも、そんなふうに辿り着いても何年も更新されていないブログが多くて寂しい(涙)
いたち野郎さんもお忙しいと思いますが、また音楽の記事を楽しみに待っていますからネ♫

無題

  • いたち野郎
  • 2015-10-15 00:48
  • edit
Kinks girlさん、過去の記事読んでいただきありがとうございます♪ アマゾンへのリンクが切れている…あとで直しておかないと!

普段古いロックを聴かない人にオススメを尋ねられた時、ニック・ドレイクをすすめることが多いです。ジャンルに縛られないし、あの声を魅力に思う人はロック好きでなくても多いんじゃないかと思ってまして。実際、Kinks girlさんと同じく聴いて泣いたという報告もあります!笑

ジュディ・シルの件で、そんなことを書いたかもしれません(笑)。もう何年も前の話ですが…他にもゲイのミュージシャンばかり買っていたら疑われたりとかもありました。

実際は、同じ趣味を持った人って少ないと感じるかもしれませんね。でも、こうしてブログを辿ったり、ライブやイベントに行ったり…と自分から求めれば必ず同じ趣向の人とは出会えますよ。とはいっても自分は自主性がないというかなかなか自分では動かないんですけど、やっぱり趣味の話すると楽しいですし、そういう知り合いが増えるのはいいなーと思います。こうしてブログ上でやりとりするのもその一つですしね!

リンク先さんも更新が止まっているところが多いですね。なかなかここも更新頻繁にとはいきませんがたまにアップしているので、懲りずによろしくお願いします♪
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